日銀,財政,ヘリコプターマネー
(写真=PIXTA)

7月の金融政策決定会合で、日銀は追加金融緩和に踏み切ると考える。追加緩和の手段としては、マーケットの限界論を払拭するため「量」・「質」・「金利」のすべての手段を使う必要がある。そこで、マイナス金利の-0.1%から-0.2%への拡大、及びマネタリーベースの年間約80兆円の増加から約85兆円(ETFの2兆円程度の増額を含む)へ引き上げが考えられる。貸出支援基金の金利を0%から-0.1%に引き下げることも議論されるだろう。もし今回使われなかった次元があるとすれば、その次元はもう限界に来ているとマーケットで認識されると考えられる。

必要なのは財政拡大、だが追加緩和の効果は限定的?

財政政策は金利上昇と為替高をもたらすために効果がない。デフレは貨幣的現象であり需給ギャップも金融緩和のみで解消できると、いたずらに金融緩和だけを拡大していった日銀の行動はクライマックスに来ている。企業の貯蓄行動(デレバレッジ)が顕著である中でデフレ完全脱却のモメンタムをつけるためには、財政拡大によりネットの資金需要を復活させる。そして、それを日銀が間接的にマネタイズすることにより、マネーを循環・拡大させる必要がある。

確かに、現在、デフレ完全脱却のモメンタムを強くするために、必要なのは財政拡大である。しかし、マイナス金利政策を含め、日銀の追加金融緩和の直接的な効果は限定的であろう。だが、不十分な政策ロジックの中で、デフレ完全脱却へのコミットメントの信任を維持する必要があり、戻るに戻れぬ状況に追い込まれた追加金融緩和の結果となろう。言い換えれば、財政拡大と金融緩和の適度なポリシーミックスでデフレ完全脱却を目指していれば、これほど金融市場に負荷をかけないでもよかったはずだった。

2%の物価目標達成は依然として困難

4月と6月の金融政策決定会合で、日銀は追加金融緩和を決断しなかった。1月に決定し、2月から実施したマイナス金利政策の効果を見極めるとともに、7月の参議選挙を控え、金融緩和の是非が争点となることを避けたかったのかもしれない。しかし、日銀が目指している「2017年度中」の2%の物価目標の達成は困難であることに変化はない。

7月の金融政策決定会合の展望レポートでは、日銀の2016年度のコアCPIの見通しが+0.5%から下方修正される可能性が高い。政府の2017年度のCPI(総合)見通しは+1.4%と、既に2%を大きく下回っている。日銀の+1.7%という2017年度のコアCPIの見通しも下方修正されるだろう。日銀は「2018年度中」へ物価目標の達成時期を更に先送りし、追加金融緩和の根拠とするだろう。消費税率の引き上げが2019年10月まで延期されたことと整合的でもある。