25日の任天堂 <7974> は売り気配ではじまり、5000円安の2万3220円(▲17.72%、S安)で引けた。同社が22日の東証引け後に「ポケモンGOによる業績への影響は限定的」と発表したことが大きく影響した。
ポケモンGOの配信が開始した22日、任天堂の株価は配信が伝えられた午前中に、一時、2万9920円の1920円高まで上昇したものの、午後になって急落。前日比でプラスは維持したものの、高値からは1700円分上げ幅を縮小していたところに冒頭の発表が直撃する格好となった。
任天堂の株価は8営業日で2.3倍 時価総額2兆円増
米国などでポケモンGOが先行配信されたのは7月6日。配信前の任天堂の7月6日株価は1万4380円だった。ダウンロード数の好調さや世界的な社会現象とも言えるヒット状況がレポートされたことで株価が人気化しはじめ、7月8日には出来高急増、7月9日には株価が2万円突破、7月19日に株価は3万円を突破した。
2兆円だった任天堂の時価総額はわずか8営業日で一時4兆円を超え、19日の高値は3万2700円。なんと株価は配信前から2.3倍だ。これだけ時価総額の大きな株が短期間で急騰することは非常にまれだ。 出来高も異常なほど膨らんでいる。7月20日の任天堂の売買代金は7323億円と、個別株として日本市場過去最高を記録した。任天堂だけで、東証売買代金の約27%に達するほどの過熱ぶりだった。
任天堂がポケモンGOの業績への寄与は限定的と開示
任天堂はポケモンGOの配信当日の東証引け後に、株価急騰に対して「期待しすぎるな」という警告に思えてしまうような下記の発表を行っている。
「当アプリは、米国法人Niantic, Inc.が開発を行い配信しており、当社の関連会社である株式会社ポケモンは、ポケットモンスターの権利保有者としてライセンス料及び開発運営協力に伴う対価を受け取ります。 なお、株式会社ポケモンは、当社が議決権の32%を保有する持分法適用関連会社であるため、当社の連結業績に与える影響は限定的です。(省略)直近の状況を鑑みても、現時点では、当業績予想の修正は行いません。今後、業績予想の修正が必要になった場合には、適時開示を行います」
アプリ売上のうち、AppleまたはGoogleが徴収するプラットフォーム使用料が30%程度。70%がNiantic社に入る。任天堂はそのうちの一部をポケモン社のライセンス料及び開発運営協力に伴う対価として受け取る。ライセンスの相場は一般的に30%程度だ。任天堂の連結決算への寄与はさらにその中からNiantic社の持ち分比率である32%となる。結局はポケモンGO売上の7%程度が任天堂の連結決算への寄与となる計算になる。
無視できるほど小さくはないが確かに限定的だ。社会現象になっているだけに、そうはいってもこれから任天堂の業績に対する寄与度は上がってくるだろうし、任天堂の世界での広告効果は計り知れない影響があるだろう。ポケモンGO以外のポケモン売上や他のゲームにもシナジー効果は確実に期待出来るので株価は動くのはわかる。
バリュエーションでは説明がつかなくなってきた任天堂
ヒット商品は会社を変える。任天堂は、ファミコン、DS、Wiiなどのハード機器の好調で業績が一変して株価が何倍にもなった歴史がある。ただ、これほど短期間で急騰するのも珍しい。関連銘柄にしても、裏付けのある銘柄を物色するなら理解できるが、今回はほとんどの企業はまだ何の影響もリリースもなく、単なる連想ゲームで買い上がっている銘柄ばかりだという。
大手証券会社のアナリストのなかには狂騒曲から降りてしまった人もでてきた。 ドイツ証券では、任天堂に対し「しばし熟考」とコメント。レーティングを「Buy」から「Hold」に引き下げた。目標株価は2万3600円→3万円と引き上げた。ほんの1週間で同社の時価評価は190億米ドル増加。市場は現在、同社の時価総額を270億米ドルと評価している。これは世界のビデオゲーム市場のシェアの各5%を握る世界の業界リーダーである米EAやATVI並み(任天堂のシェアは2%)のバリュエーション。大幅な上振れ余地を織り込むには、さらに確固たる証左が必要とした。
UBSは任天堂を「Sell」で継続している。ファンダメンタルズで説明できるか、株価上昇は何を期待としているのか、目標株価1万5000円を継続した。もちろん強気なアナリストもたくさんおり、アナリストの判断と株価の動きが一致するとは限らないが、すでに株価の説明が付かないところにあるだろう。