7月の米雇用統計が間もなく発表される。先月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で示された「労働市場は力強く回復している」との認識を裏付けるものとなれば、年内の利上げ観測が一段と高まることになりそうだ。

しかし、ウォール街の市場関係者の間では「利上げよりも景気の失速が心配」と見る向きも少なくない。堅調な雇用情勢が予想されるにもかかわらず景気の先行きに不安を残すのは、なぜだろうか。

雇用者の増加ペースは鈍化している

ちなみに、6月までの雇用者数を確認すると、5月が1.1万人の増加、6月は28.7万人の増加となり、振れ幅が大きくトレンドが見えづらくなっている。

だが、3カ月ごとに区切って均してみると、昨年10月から12月までが28.2万人増、今年1月から3月までが19.6万人増、4月から6月までが14.7万人増となり、明らかに増加ペースが鈍化している。

2015年通年での平均値は22.9万人増だったが、平均的に20万人を超える増加はもはや現実的ではなくなったといえるだろう。

では、現実的な数字とは何か。まず、FRB(米連邦準備理事会)関係者の発言が参考になる。ダラス連銀のカプラン総裁が8月2日、「経済の緩みを解消するためには8万人から12.5万人の雇用創出を望んでいる」との考えを示している。このことから、10万人程度がひとつの目安になると考えられる。

カプラン氏の見解は、昨年12月のイエレンFRB議長が示した「10万人弱の雇用増加で労働市場への新規参入者を吸収できる」との認識と符号する。従って、10万人程度がFRBの求める雇用の伸びの最低水準と言えるだろう。

インフレ率は2%に向かって上昇中

物価の動きをみると、6月のCPI(米消費者物価指数)は前年同月比1.0%の上昇にとどまっている。しかし、基調的な動きを示すコア指数(除く食品・エネルギー)は2.3%上昇しており、昨年11月に2.0%に達してからも上昇傾向に衰えが見られない。

FRBがより重視しているとされるPCE(コア個人消費支出)価格指数をみても、6月は1.6%上昇と年初からほぼ横ばいを維持している。利上げが開始された昨年12月の1.4%上昇からは強含んでおり、緩やかな上昇過程にあるとみてよさそうだ。

雇用統計との関連では、賃金の伸びも注目される。6月の平均時給は前年同月比で2.6%の上昇となった。もちろん水準自体は決して高いとは言えないが、この数字は金融危機後の景気回復局面では最も高い数字であることも事実である。

こした状況を踏まえて、7月のFOMCでは「物価は目標とする2.0%を目指す」との従来からの認識が維持されたのだろう。