雇用統計は「10万人に収束する」過渡期か?
FRBの責務は「雇用の最大化」と「物価の安定」である。具体的には5.0%以下の失業率と、2.0%近辺のインフレ率だ。
失業率は既に5.0%以下で推移しており、ほぼ完全雇用が達成された状況にあることから、今後の雇用者数の増加ペースは人口増加を吸収するとされる「10万人程度に収束する」ことが予想される。7月の雇用統計では15万人から20万人程度の増加が見込まれるものの、現在はまだ「10万人程度に収束するまでの過渡期」にあると考えられる。
15万人から20万人程度の雇用増加は、FRBが満足する数字となる公算が大きい。しかし、その程度の雇用増加と2%台後半の賃金の伸びで米経済成長が加速するのかと問われれば、可能性は低いと言わざるを得ない。
実際、4〜6月期のGDP(米実質国内総生産)は、前期比年率1.2%増にとどまった。昨年10〜12月期の0.9%増、今年1〜3月期の0.8%増に続き、これで3四半期連続で2.0%を下回ったことになる。
米経済の低成長と企業業績の不振
ファクトセットが公表した7月29日付けのリポートによると、S&P500 を構成する銘柄の4〜6月期の企業収益は前年同期比3.8%減となる見通しだ。実現すれば5四半期連続での減益となり、金融危機以来の業績不振となる。
市場関係者を不安にさせているのは、このまま雇用者数の増加ペースが鈍化し、近い将来10万人程度で安定してしまうと、たとえそれが「FRBの望む数字」であったとしても、その先には「経済の低成長と企業業績の不振が待っているのではないか」という懸念である。
こうした懸念を覆せないのであれば、予想通りの結果が出たとしても、株価やドルの上昇には自ずと限界があるのではなかろうか。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)
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