「納得頂けない」という報告をしてはならない

銀行員は「アフターフォローの結果」を本部に報告することが義務付けられている。

具体的には、(1) 現状に満足頂いていおり継続保有の方針、(2) 解約の方針、(3) 納得頂けない……といった具合にアフターフォローの結果を報告しなければならない。

問題は(3)「納得頂けない」という報告をしてはならない点だ。納得頂けるまで「何度も繰り返しお客様とお話しさせて頂くよう」本部から厳しく指導される。考えてみて欲しい。全てのお客様が投資信託の運用状況に満足することがあり得るだろうか。

投資がうまくいかず、多額の含み損を抱えるお客様がすべて満足されているなど、どう考えてもあり得ない話だ。

まるで戦時中の大本営発表のような話だが、これが現実なのだから笑い話にもならない。

アフターフォローには魂胆がある

銀行側には、明らかに魂胆がある。

「当行では投資信託を買って頂いたお客様に対し定期的にアフターフォローを実施しています。決して売りっぱなしではありません」という監督官庁向けのアピールだ。アフターフォローとしては最低であり、タチが悪いことは言うまでもない。誰のためのアフタフォローなのかと問いただしたくなる。

強制されたわけではなく、自発的にアフターフォローを行う銀行員もいる。だが、はっきり言おう。「魂胆のないアフターフォローなどあり得ない」と。

銀行員にはノルマがある。金融商品を販売し収益を稼がなくてはならない。1円の収益も生み出さない雑談をしている余裕などない。

「新たに投資信託を購入頂きたい」「利益確定して新たな投資信託に乗り替えて欲しい」そんな魂胆があるからこそアフターフォローを行うのだ。投資信託を販売している本人が言っているのだから、間違いはない。

アフターフォローは必要なのか

そもそもの話だが、私は基本的に投資信託にアフターフォローは不要だと考える。もちろん、お客様から情報提供やアドバイスを求められれば、真摯に対応すべきことは言うまでもない。

しかし、銀行員から積極的にアフターフォローを行うべきではない。理由は先に書いたように、そこにはアフターフォローを販売に結びつけたいという魂胆があるからだ。「そんなことはない。それがお客様の利益になるのだ」という反論もあるだろう。だか、銀行の都合の良いタイミングでアフターフォローを行うのはフェアとは言い難い。

投資家自身が判断できるように…

私が理想とする投資信託の販売はこうだ。

投資信託を購入頂くときには「なぜ、この当信託を買うのか。その理由を明確にしておくこと」。たとえば、今後も低金利が持続すると考えた結果、REITを購入する。もし、長期金利が上昇に転じるようなら、利益が出ても、損失が発生しても売却しなければならない。市場環境が当初の想定と異なった方向へと動けば、撤退する。投資家自身がそれらを判断できるようにするのが、本来の姿なのだ。

世の中には常に好材料と悪材料が存在する。決してウソはつかないまでも、銀行員のアフターフォローの中には恣意的に隠されている材料と、強調されている材料がある。あなたはそれを的確に判断できるだろうか。

自信がない人にはアフターフォローは「危険なワナ」だ。アフターフォローはお客様のためならず。銀行員は数字が欲しいからアフターフォローに熱心であることを忘れてはならない。(或る銀行員)