台湾では5月に蔡英文が総統に就任、イギリスでは7月にメイ首相が誕生、7月末日には小池百合子氏が東京の新知事に当選した。女性リーダーが注目されている。韓国の朴槿恵大統領、ミャンマーのアウン・サン・スーチー女史もいるが、彼女らは創業家の色彩が強い。またヒラリー・クリントンはアメリカ史上初の主要政党大統領候補に指名された。ともかく世界中で女性リーダーが躍進中なのは間違いない。中国人には何か感じるものがあるのだろうか。

中国リーダーの必要条件

小池新東京都知事誕生に関する新聞記事は、極めて小さな扱いだった。女性初の首都知事が誕生した。自民党内部の葛藤の中で、無党派層と自民党支持者も取り込み大勝した。とあるだけで、いつもの批判的トーンはなく、寂しいくらいだ。中国人によく聞かれるのは、彼女に能力があるかどうかである。

昨年12月の台湾総統選前、中国やベトナムでビジネスを展開する台湾人男性は、蔡英文候補への不安をあからさまに述べていた。彼の発言には反中国姿勢の民進党という以外に、女だ、というフィルターも確かにかかっていた。しかし今やEUの盟主であるドイツのメルケル首相も、当初は不安視されていた。女性国家トップの歴史は、1960年スリランカのバンダラナイケ首相から始まったばかり、まだ半世紀しか経っていない。

中国では2000年以上にわたる王朝時代において、正式に最高権力者の地位についた女性は、唐朝を廃して自分の王朝を作った武則天ただ1人である。もう1人の有名女性、最後の王朝・清の西太后は、皇帝になる気はなく、愛新覚羅家という家を守ろうとした最強の主婦だった。

中国政治におけるトップリーダーの必要条件とは、ライバルを葬る豪腕である。現代でも政争には犠牲者が出る。王朝時代ならすさまじい血の雨が降った。これに耐えうる女性は、さすがに男性より少なかったのだろう。

女性の最高ポストは政治局員兼副首相

中国共産党員は2014年末で8779万3000人、そのうち女性は2167万2000人で24.7%と約4分の1である。幹部になると、中央委員候補、中央委員、政治局員候補、政治局員、政治局常務委員と上っていく。

第18回党大会での中央委員候補以上はたった376人しかいない。そのうち女性は33人。政治局員は25人、女性は、劉延東(1945~)国務院副総理、孫春蘭(1950~)統一戦線部長の2人だけである。女性の割合は幹部になると10%以下に減ってしまう。

この劉延東と呉儀(1938~)が務めた政治局委員兼副首相というポストが女性の最高位である。最高権力層の政治局常務委員に上った者はいない。現役の2人も年齢からすると次期党大会(2017年)で政治局員に再任されないだろう。代わりに何人の女性が登用されるか注目される。本気で権力を取りにいった毛沢東夫人・江青(1914~1991)も政治局員止まりだった。