中国Fintech,平安保険,中国保険市場
(写真=PIXTA)

要旨

中国におけるFintech(金融事業とITの融合)といえば、通販大手のアリババや、SNSに強みを持つテンセントといったIT関連企業が注目されがちである。しかし、もう一方の金融機関-保険会社も2015年以降、その評価を高めてきている。

中でも、既存の大手保険会社として、フィンテック分野への積極的な投資や、自身の成長戦略のあり方を大きく変えているのは、中国平安保険グループである。

平安保険は、2016年に入り、既存の保険、銀行、投資(証券)に加えて、フィンテックを4大事業の1つに据えた。今後10年間、「IT+総合金融」を戦略の柱とし、P2Pレンディングや医療・ヘルスケア分野を重点に、世界のトップを目指す。

中国のFintech―アリババ、テンセント、、、だけではありません。

ビッグデータの解析や人工知能の活用によって、イギリス、米国を中心とする先進諸国では、Fintech(金融事業とIT(情報技術)の融合:フィンテック)の開発や普及が急速に進んでいる。

中国におけるFintechといえば、通販大手のアリババや、SNSに強みを持つテンセントの成功例が注目されがちである。

アリババが導入した商品やサービスの代金を支払うオンライン決済(「支付宝」・アリペイ)、アリペイの口座内にある小額投資が可能なオンライン金融商品(「余額宝」)、また、オンライン決済口座での取引や与信情報を活用した小口融資(「アリ金融」)など、このわずか数年で、国内の金融サービスのあり方を変えた功績は大きい。

つまり、これまで、中国のフィンテックの普及は、金融機関側ではなく、IT関連企業側が中心となって、推し進められてきた。一方、金融機関―保険会社はこの状況をただ傍観していた、というわけではない。2015年のFintech企業100社の1位には、オンライン専業の衆安保険(ZhongAn)が選出されている(1)。

衆安保険は、設立されて間もなく、規模はまだ小さいものの、大手機関投資家から多額の融資を受けるなどその潜在的な成長性が評価を受けた点が奏功したのであろう。

衆安保険は上掲のアリババ、テンセントなどが出資した保険会社である。しかし、その衆安保険の背後に控えている企業の1つに、中国保険業において第2位の規模を持つ中国平安保険グループ(以下、平安保険)の存在があることは、あまり注目されてこなかった(2)。

平安保険はこうしたフィンテック分野におけるスタートアップ企業への積極的な投資もさることながら、既存の大手保険会社としても、自身の成長戦略のあり方を大きく変えてきている。

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(1)〔参考文献〕「Fintech(フィンテック)100、1位の衆安保険を知っていますか?」(中国保険市場の最新動向(20)2016年6月21日)
Fintech100:2015年12月に、KPMGとH2 Venturesが世界19カ国において、最も成功しているフィンテックイノベーター100社を発表。Fintech100の上位50社には、中国企業が7社選出されている。
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2)平安保険は、衆安保険に12.1%出資しており、保険経営のノウハウ全般をサポートしている。
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