不動産投資の指標IRRとは

では、実際に不動産賃貸業を始めるために物件を吟味する段階で、何を基準に選択していけば良いのだろうか。その一つの指標がIRR(Internal Rate of Return=内部収益率)だ。この指標を少し詳しく見ていこう。

不動産投資で重要なのは、毎月の家賃収入であるインカムゲインだけを考慮した表面利回りだけでなく、売却時のキャピタルゲインも含めたトータルリターン(インカムゲイン+キャピタルゲイン)だ。不動産投資でよく使われる年間賃料収入を投資金額=購入価格で割った表面利回りや、家賃収入から税金、保険料、管理費等を差し引いた減価償却控除前の収入である償却前利益(NOI)は、不動産投資においては一つの目安として考えるべきだ。

ある不動産物件に投資してから売却まで、その保有期間すべての収入と経費を計算し、最終的に投資した金額がいくらの利回りで運用できたのか精査する必要があるのだ。

例を挙げて計算してみよう。

2億円で購入し、毎年1,000万円の収入がある物件の場合、購入から5年間所有し、5年後の売却金額が購入金額と全く同じ2億円の場合、IRRはNOI利回りと同じ5%だ。

次に2億円で購入、毎年1,000万円のNOIがあり、5年後に出口のタイミングだと判断し、その時2億1,000万円で売却すると、IRRは5.89%となる。

もし売却金額が2億1,000万円ではなく、何らかの理由により1億9,000万円とせざるを得ない場合、IRRは4.08%になる。

ここからわかる通り、不動産投資のIRRを高めるためには、借り手にとって魅力的な空間を提供することで、できるだけ空室期間を少なくし、投資期間中の稼働率を高めて毎月の家賃収入をコンスタントに得る必要がある。同時に、常に経済情勢や不動産の相場を評価しながら、購入時より高い値段で売れるタイミングで売却するといった不動産の「出口戦略」が極めて大切になるのだ。これを逆手に取り、事業用不動産は「賃貸するもの」から「所有するもの」へ考え方を変えることで、不動産のキャピタルゲインを使った財務戦略が有効に使えるようになる。

どの地域が狙い目か

では、キャピタルゲインを狙いやすい場所はどこだろうか。それはやはりなんといっても東京都心部だ。

日本経済新聞の2016年8月9日付記事によると、2015年に地方から1都3県へ本社機能を移した企業数は過去最多だった。安倍政権は発足当初から地方創生を政策の柱に据え、本社の東京から地方への移転を推進しているが、地方での人口減が首都圏への流出を促し、地方経済をさらに疲弊させる「負の連鎖」に陥っているのが現状だ。結果、東京一極集中に歯止めがかかっていない。

帝国データバンクはこの状況を「地方企業は地元での人口減が顕著で、労働力やビジネス展開を求め東京に拠点を移す傾向が強い」と分析している。

安倍政権は、日本全体で一億総活躍社会を掲げ、首都と地方の格差を埋めるべく努力してきたが、今のところその効果はほとんど表れていない。いずれ起こることが想定されている首都直下型地震に対応するように事業継続計画=BCP(Business Continuity Plan)の中で企業の事業の一部を東京圏から地方へ移転を目論んだが、これも目に見える成果として上がっていない。

これらを鑑みると、よほど効果的な政策が打ち出されない限り当面、東京への一極集中は継続することとなるだろう。さらにこの状態を2020年の東京オリンピックが後押しする。東京周辺のオリンピック関連施設の建設は、ますます地方との格差拡大の大きな要因となりえるのだ。

不動産投資の視点から、キャピタルゲインを得る第一候補としてあげられるのが東京だ。また、国際的視点から考えても、東京のステータスは不変だ。

自社のオフィスを賃貸にするか、または所有してしまうのか、長期的な視点からじっくり考えてみる必要がある。キーワードは「東京」と「キャピタルゲイン」だ。いきなり一棟物の賃貸ビルを持つことはリスクがあるとお考えの経営者の方は、まずは区分所有オフィスを持つことから不動産経営を始めることを考えてはいかがだろうか。(提供: 百計オンライン

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