米国における中産階級の求人倍率が、2008年のリーマンショック以来初めて、上位階級と低位階級を上回ったことが、ニューヨーク連邦準備銀行の調査から明らかになった。

以前から問題視されていた「所得格差の縮小」に向けた動きとしては期待が持てる反面、実際は上位階級とほかの階級の「技術格差」に大きな差が開いたままであり、適切な人材不足に苦戦する企業の現状を反映している。

企業が求める技術や資格をもった中産階級職は人材不足

階級の定義は分析を行う機関によって微差がでるようだ。CNN Moneyが今年6月に掲載した定義では、年収35万ドル(約3504万円)以上を上位、それ以下10万ドル(約1010万円)以上を上位中産階級、それ以下5万ドル(約501万円)以上を中位中産階級、それ以下3万ドル(約300万円)以上を低位中産下級、それ以下を低位階級と定義している。

ニューヨーク連邦準備銀行も3万ドルから5万ドル(約300万から501万円)を中流としていることから、ここでは「低位中産階級」という想定にする。

リーマンショックが引き金となった経済危機から、素早く回復傾向に転じた米国。しかし2010年から2013年にかけて、上位階級と下位階級には210万件の雇用口が解放されたのに対し、新規雇用となった中産階級はその6割にも満たない120万件と、所得格差を押し広げることなった。

2013年に突入してからようやく中産階級職に回復の兆しが見え、2015年までの2年間で220万件の雇用口を記録。上位階級職の150万件、下位階級職の160万件を、はるかに引き離す快挙である。

しかし多くの企業が本当に求めているのは技術や経験のある従業員であり、本当の意味での所得格差が埋まりつつあるわけではない。雇用の拡大は景気回復だけではなく、適切な人材確保に苦戦する企業の焦りを表しているからだ。

階級間の技術の差を埋めない限り、米国の経済回復は不安定性を払拭しきれないだろう。