中産階級職の応募者の8割が条件に満たず

米国の雇用の一例を挙げると、エクゼクティブ専属秘書の求人の65%が応募条件に大学の学位を要求しているにも関わらず、実際に学位を取得しているエクゼクティブ専属秘書はわずか19%だという。

ハーバード・ビジネス・スクールのジョセフ・フラー教授は、現実と理想のギャップを指摘する一方で、「企業はすぐに戦力となる人材を求めている」と分析。

リサーチ機関、コーポレーション・エクゼクティブ・ボードの調べでは、1件の雇用口に対する応募者は平均30人だが、そのうち8割は応募条件を満たしていないこともわかっている。

その結果、職の埋まらない求人数が増える一方で、パート雇用者が増加。600万人が正規雇用口を求めているにも関わらず、パート勤務を余儀なくされている状況だ。このように「複数のパート職をかけもちして生計を立てなければならない」人々が、過去10年間で170万人も増えた。

中産階級に代表される職業は、ソフト開発などのIT専門家、警察官、看護婦、教師、会計士など、何らかの技術や知識、そして高卒以上の学歴が必要となるものばかり。近年は輸送や建設関連の職も中産階級職に仲間入りしているが、やはり経験や技術が採用基準となる。

中産階級職の求人を埋めるには、通常の求人の2倍の期間である40日を要するそうだ。つまり中産階級の雇用が拡大傾向にある背景には、「企業がより多くの人材を採用している」のではなく、「それだけ適切な人材を見つけにくい」といった事情が色濃く潜んでいる。

米国の雇用市場最大の弱点である、育成プログラムの欠落にどれほど焦点が当てられるかが、米国雇用市場の行く末を大きく左右するだろう。(ZUU online 編集部)

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