ことの真偽はともかくとして、世の中には多くの人を納得させてしまう不思議な言葉がある。投資の世界でいえば「外国人投資家」「ヘッジファンド」だ。

なぜ今日の相場は上昇したのか。なぜ今日の相場は下落したのか。多くの人はその答えを求めている。そして多くの市場参加者は「外国人投資家が買っている」「ヘッジファンドが売っている」という言葉に納得してしまう。

お客様だけではない。
私が携わる銀行の金融商品販売の現場でも「ヘッジファンド」を盲信するムードが広がっている。まるでヘッジファンドが銀行を救うとでも言わんばかりだ。

そもそも「ヘッジファンド」とは何か?

ヘッジファンドとは、さまざまな取引手法を駆使し、マーケットが上がっても下がっても利益を追求することを目的としたファンドである。

ヘッジ(hedge)とは本来「避ける」という意味で、相場が下がったときの資産の目減りを避けることに由来する。

一般的な投資信託は、相場が一方向に動いたときのみ利益が出る仕組みのものが多い。だが、ヘッジファンドは先物取引や信用取引などを積極的に活用することで相場の「上げ下げに関係なく」利益を追求する。本来のヘッジ(避ける)という意味よりも、むしろ積極的に利益を求める姿勢を基本としているものが多い。

私の顧客の中にも「ブリッジウォーターに出資している」と誇らしげに自慢する人がいる。ブリッジウォーターとは、リーマンショックを予測したとされる、レイ・ダリオ氏率いる世界最大級のヘッジファンドだ。あなたもこの名前は聞いたことがあるかもしれない。

ここで明かすことはできないが、その顧客はかなりの額の手数料を支払っていることは確かだ。

「銀行の投資信託はクズみたいなものだ」

相場の「上げ下げに関係なく」利益を追求するヘッジファンド。彼らは、常にマーケットの勝者たり得るのだろうか。

当然ながら答えはノーだ。ブルームバーグが報じるところでは、ロンドンを拠点とするヘッジファンド「パルス・ファンド」の7月の運用成績は1.9%減、年初来の運用成績は13.9%減まで落ち込んでいるという。ヘッジファンドは必ずしも万能ではないことを示す事例だ。

にもかかわらず、多くの人は幻想を抱いている。「ヘッジファンドは優秀である」と。私の周りでは「銀行で販売する投資信託はクズみたいなものだ」と毒づく人さえおられるが、そんな彼らに限ってヘッジファンドを盲信する傾向にある。