だから日本人はカモにされるのだ!
「投資信託は儲かっても損しても、手数料を払わなければならない」「それに比べてヘッジファンドは儲かった場合にだけ高い報酬を払うのだから、フェアだ」そう主張するお客様もいる。本当にそうなのだろうか?
ヘッジファンドの値上がり益の20%が成功報酬だとしよう。1000億円のヘッジファンドが10%値上がりしたなら、成功報酬は20億円だ。もし、そのヘッジファンドが値下がりした場合は、成功報酬はゼロである。この仕組みを「フェア」と評価する感覚が私には理解できない。だから日本人はカモにされるのだ。
ヘッジファンドが損失を負担してくれるのであれば、悪い話ではないだろう。しかし、現実に損失を被るのは投資家自身である。一方で、投資家は値上がり益の相当部分を「莫大な成功報酬」として差し出さなければならない。それをフェアと呼べるのだろうか。
さらに酷いのは、ヘッジファンドは「リスクの大きさ」を自分たちに都合良く変えてしまうことだ。運用者の独断でレバレッジをかけることだってお構いなしである。先物や信用取引、外国為替証拠金取引……彼らは簡単にレバレッジをかけることができる。
「特別な情報に基づいてリスクを取った」「最新の金融工学に基づき」「ビッグデータに基づいて」「独自のトレーリングシステムに基づいて運用を行う」などと専門的な言葉を並べられると、銀行員でさえ反論できなくなる。そのようなモノを個人投資家に販売して良いのだろうか。
「運用のドリームチーム」でさえ破綻する
最近では嘆かわしいことに銀行員までもが「絶対収益追求型」のファンドを導入すべきであると息巻いている。個人投資家の関心も高いので、手数料を稼ぐには良いツールとなるだろう。
しかし、あえて言いたい。手数料を稼げばそれでいいのかと。ヘッジファンドは万能ではない。投資の世界に「絶対」という言葉は存在しない。
1998年、米国のヘッジファンド「LTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)」の破綻を覚えておられるだろうか。
LTCMの幹部には、FRB元副議長のデビッド・マリンズ、ブラック-ショールズ方程式を完成させ、共に97年にノーベル経済学賞を受賞したマイロン・ショールズとロバート・マートンといった著名人が加わっていた。「運用のドリームチーム」と呼ばれた彼らでさえ破綻するのだ。
その事実を人々は忘れてしまったのだろうか。ヘッジファンドを盲信しがちな最近の風潮に、私は大きな危機感を禁じ得ない。(或る銀行員)
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