スイスのUBS銀行は、2016年米大統領選挙でドナルド・トランプ大統領が誕生した場合、「リテール」「飲食業」「エネルギー」「防衛」「銀行」の5つの産業が最も恩恵をこうむるという見解を示した。
しかしトランプ氏の経済政策には極端な偏りが見られるほか、黒字とともに赤字を拡大するリスクが高く、ほかの多くの世論同様、「様々な点から考慮して、ヒラリー政権の方が無難」と結論づけている。
「原油の自国供給」で米国を独立化させたいトランプ氏
トランプ氏が8月に発表した経済政策では、法人税の最高税率を35%から15%に引き下げるなど、第二次世界大戦以来の大規模な減税改革案が注目を集めた。
これが実施されれば、景気浮揚策として効果をあげることが期待され、財布の膨らんだ消費者から、リテールや飲食業が受ける恩恵は容易に想像がつく。
防衛産業に関してはトランプ氏も、ライバル候補者であるヒラリー・クリントン氏も、防衛産業への支援拡大を明らかにしている。
ここで引っかかるのは、トランプ氏が全面に掲げているスローガンの一つ、米エネルギー産業の促進だ。
トランプ氏はこの分野の規制を緩和し、油田や天然ガスの採掘量を増やすことで、「米国に眠る偉大なるエネルギー産業の可能性」を解き放つという戦略だ。
しかし産油量と石油掘削リグ稼働数の減少が効果を成し、短期的に価格が浮上したのもつかの間、過剰供給への懸念が再発し、原油市場は再び低迷し始めている。
そこへトランプ氏の「原油解放」が加われば、一時的な繁栄は期待できたとしても、長期的にどのような結果をもたらすかは想像するまでもない。
ところがトランプ氏の意図は原油価格の安定ではなく、あくまで「原油の自国供給」にあるようだ。「自国で十分な原油を産出できれば、ほかの原油をエサにした取引に応じる必要がなくなる」といった数々の発言からくみ取れる。