中国,覚せい剤,薬物,スキャンダル,芸能界
(写真=PIXTA)

日本人の中国駐在員が日常生活を送る上において、麻薬中毒者に直接関わるようなことはまずない。ただし噂なら耳にする。例えば山東省・青島市にある不動産会社の2代目が麻薬におぼれているという。開発したショッピングセンターは電気代日本円4000万円相当を滞納中で風前の灯、また建設中のビジネスビルも中断に追い込まれるなど、苦境が伝えられていた。そのプレッシャーから逃れるためのめりこんだらしい。黒社会(暴力団)とのつながりも噂させている。

ところで危険な薬物はどの程度、一般中国人に浸透しているのだろうか。

中薬と西薬、オモテの薬事情

中国では漢方薬のことを“中葯”と言い、欧米の薬のことを“西葯”という。「中西葯房」という看板を見れば、両方を扱っている薬屋と分かる。また国家統計局の発表する社会消費品小売総額には、「中西薬」という項目があり、一緒にされている。2016年1月~7月の売上は4633億元で前年比△12.3%伸びた。小売総額全体では、△10.2%なので、伸び率は全項目中で4番目の高さ、構成比は2.84%である。正当な“オモテ”の薬も常に高い伸びを示している。さらに爆買いで日本からも大量に買ってくる。

中国人はあらゆることに即効性を求めてやまない。薬を含む医療行為では特にそうだ。風邪を引けば、強力な点滴処方を求める。ある日本人駐在員は糖尿の気があり、中国の病院で薬を処方してもらった。一時帰国したとき日本人医師に、その処方について相談すると、命にかかわる危険なレベルだと警告された。投薬量が日本標準の5倍だったのだ。中国のほとんどの病院エピソードは、過剰投薬を物語っている。中国人は薬に依存する心が強く、副作用に対する警戒感は薄いように見える。

ウラの薬事情、広範囲に流通か?

“ウラ”の薬事情はどうなのだろう。一般人レベルの話を少し集めてみた。

大都市のナイトクラブでは“揺頭丸”という薬物が流行っている。服用後1~1,5時間で気分がよくなり、どれだけ踊っても(4~6時間)疲れなくなるらしい。中毒性が強く、断ち切るのは難しい。金持ちのボンクラ子弟のイメージだ。また彼らの間では、氷毒(アンフェタミンの1種)、大麻なども用いられ、精力剤として認識されているという。

甘粛省・蘭州市郊外出身の男性は、一昔前の話と断って、遠縁に当たる人間がしばしば実家に阿片を売りに来ていた、という。あるとき帰省していた彼が厳しく拒絶すると、母親から遠縁の者を粗略に扱うな、と逆に叱責されたそうである。彼の印象では、おそらく田舎で行われていることは現在でも大差ないという。

また筆者は北京市内を車で移動していたとき、バイク同士が寄り添って怪しげな黒い袋を交換しているのを見た。スピードを落としているとはいえ、夕闇の迫る中、大変危険な行為だ。同乗していた北京人は、「麻薬の取引だろう。」と推測を述べた。

東南アジアと国境を接する雲南省から全国に流通していることは一般常識のようである。そういえばケシの実入り火鍋料理もごく普通に存在していた。ウラの薬物と一般人との垣根は、かなり低いと言えそうだ。