当てにならない中毒者統計

中国における2015年の薬物犯罪検挙者は、前年比20%増の106、2万人である。人口10万人当たり78人となり、これは日本の7.8倍に当たるそうだ。また登録依存患者234万人、常習者1800万人という。

中国でネットを見ていると、「中国での薬物中毒者の増加は“不帰の路”を走り、その実数は“始終未知数”である。中国の統計数値は多くの領域で国家機密であり、随時対外公布できるものではない。医学においても医政一体という体制的腐敗の影響は大きい。これが医学の発展的前進を阻害している。医院は利益を最大化するため“真話”つまり薬品には三分の毒があるということを患者に伝えない」などという率直な批判記事が出ていた。つまり薬品過剰投与を起因とする中毒まで含めれば、一体何人の中毒患者がいるか絶対にわからない、ということである。

芸能界はどこも同じ?

芸能界はどうだろうか。「吸毒明星名単(薬物汚染スター名簿)」が出回っている。覚せい剤で捕まった芸能人名鑑である。1人取り上げてみよう。

尹相杰、男、1969年北京生まれ。歌手、俳優、MC。1990年活動を開始、93年北京電視台の春節祝賀コンサートに歌手として出演、注目を集める。1995年からは俳優として、電視連続劇(連続テレビドラマ)に出演、俳優活動に進出。2008年には歌曲「中国骨気」を作詞するなど多芸であるようだ。風貌は三枚目キャラクターである。

2012年2月12日、非法持有毒品罪で北京市朝陽区人民検察院に起訴される。同月28日、同区人民法院で審理開始。最終的に懲役7カ月、罰金2000元の判決を受けた。尹は控訴せず判決は確定、7月24日に釈放された。ところが同年11月24日、再び逮捕される。尿検査で陰性だった。このときになって初めて10年以上に及ぶ“吸毒歴”を供述している。日本とそっくりである。

市場の大きさ、薬に対するスタンス、田舎の緩んだ治安、統計隠し、などなど薬物問題は中国の方がはるかに深刻そうだ。中毒者の治療はもちろんだが、“体制的腐敗”にもメスを入れなければならないのは言うまでもない。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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