企業の動きの変化

再開発と併せて街の姿も「商業の街」から、スタートアップ企業が集結する「クリエイティブ産業の街」へと変化しつつあります。

1990年代後半の渋谷は、IT・ネット関連のベンチャー企業が集まる場所でした。ITバブル期絶頂の頃で、シリコンバレーになぞらえて「ビットバレー」と呼ばれました。ところが、2000年代に入るとITバブルが崩壊。2003年に六本木ヒルズがオープンすると楽天やライブドアなどの移転が相次ぎ、そのムーブメントは下火になります。

状況が変わったのは、2012年の渋谷ヒカリエ開業でしょう。ディー・エヌ・エーやLINEなどの有力ベンチャー企業が入居したことで注目が集まり、同時に、こうした企業と取引のある企業が次々と周辺に集まったことで、IT企業の再集積が加速したのです。

加えて、渋谷には大小数多くのコワーキングスペースが存在します。IT関連ワーカーやスモールカンパニーがスペースや設備を共有する場所が多数あり、起業を考える人々、さまざまな働き方を求める人々が活動しやすい地域になっています。もともとアクセスの良い土地ですから、そうしたビジネスに携わる人にとってはより魅力のある場所になっているのです。

ベンチャーを支援する動き続々と

株式会社ツクルバが手掛ける会員制シェアードワークプレイス「co-ba shibuya(コーバ シブヤ)」もその一つでしょう。利用者同士が本棚を共有する「シェアライブラリー」を設置して、本を通じたコミュニケーションを促進し、新たなコラボレーションを作り出すなどの新しい動きは、ビジネスを進めるに当たり、有効に作用するでしょう。ツクルバでは「co-ba」を事業として展開し、全国で開設支援を行ってワーキングプレイスのネットワークを広げています。

また、ツクルバでは、ベンチャー・スタートアップを応援するプラットフォームイベント「sprout」を渋谷で開催しています。これは、日本IBMと、ベンチャー企業の上場を支援するトーマツベンチャーサポートとの3社共同主催で、渋谷でファンを獲得するためのピッチイベントとして企画・運営されています。融資や事業提携を目的とするスタートアップ関連イベントが多い中で、製品やサービスを発表して、その企業の「ファン」の獲得を目的とした珍しいイベントです。このイベントも、アーリーアダプターの集まる渋谷に着目しているからこそ、渋谷で開催するのであり、IT企業やスタートアップの集積地として存在感を高めている動きを裏付けるものになっています。

“渋谷の大家”とも呼ばれる東京急行電鉄は、ベンチャーキャピタル事業を手掛けるIMJ Investment Partners Pte. Ltd.と共同で、ベンチャー企業との事業共創プログラムを実施しています。法人設立から約5年以内のベンチャー企業を対象としたビジネスコンテストで、交通やIoT・スマートホーム、観光・インバウンドなどの6つの事業領域を中心に、沿線の生活利便性を高めるサービスやプロダクトを募集するものです。また東急電鉄では、sproutのようなイベントに場所を無償提供するといった活動も行っており、ベンチャー支援に力を入れています。

開発の続く渋谷の街では、交通網の発展を契機に、人々がどのように交わり、新しいビジネスが生み出されていくのでしょうか。期待が大きく高まっています。(提供: TATE-MAGA

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