投資信託の賞が乱発される本当の理由
銀行の金融商品販売の現場に携わる私は「現場の実態」について正直に思うところを ZUU online に寄稿させて頂いている。その際に最も気を遣うのは「盗用」、いわゆる「コピペ」である。その気はなくても、偶然どこかのサイトで全く同じ表現が使われているというケースだってあるからだ。
そう、他人様が創ったモノを無断で利用することは許されない。
投資信託のパンフレットに華々しく描かれている評価機関の賞のロゴだって同じである。「〇〇賞受賞」のロゴを使うには当然ながら、運用会社は使用料を支払う必要があるのだ。
ここに同じような内容の投資信託があったとしよう。あなたは、賞を受賞した投資信託と、無冠の投資信託のどちらを選ぶだろう? それは窓口で投資信託を販売する銀行員にも影響を与える。受賞した投資信託のほうが売りやすいのは確かだ。
投信の運用会社が支払う「ロゴ使用料」が評価機関の大きな収入源になっているのをご存知だろうか。運用会社は賞の受賞でハクがつき、投資信託の販売促進に役立つ。評価会社はロゴをたくさん使ってもらうほど使用料を得ることができる。
双方にとってたくさん賞があるほど、互いにメリットがあるのだ。こうして賞は乱発されることになる。
自分の資産は「自分で守る」しかない
では、受賞した投資信託は本当にあなたに利益をもたらしてくれるのだろうか。日本証券業協会のWebサイトには次のように書かれている。
「評価を利用する際に注意したいのは、その評価はあくまでも過去の実績を基に評価したものであり、今後の運用実績を単純に予測するものではないということです。現在の評価が高くても、今後もその評価が持続するとは限りません」
まったくその通りである。
私の経験からも受賞した投資信託のパフォーマンスが低下することは珍しくない。実は投資信託を運用するファンドマネージャーにとって、資金が急激に集まるのは、パフォーマンスの低下を招く一因なのだ。巨額の資金を運用するとなると、取引の少ない銘柄では難しい。自然と運用スタイルも制限される。多くの投資信託は集まった資金を寝かせておくこともできない。私は受賞を境に運用パフォーマンスが劣化する投資信託をいくつも見てきた。
客観的で公平であるべき立場の評価機関でさえ、実態はこの有り様だ。結局のところ、あなたの資産はあなた自身で守るしかない。それが投資の世界の厳しい現実なのだ。(或る銀行員)