東京五輪,ラブホ改装
(写真=PIXTA)

目次

  1. 外国人観光客のトレンドの変化 「消費から体験」へ
  2. 訪日観光客で注目の「ラブホ活用」
  3. 日本の国際化に一役買うか? ソフト面での充実も必要

中国人観光客による「爆買い」がめっきり鳴りをひそめて久しい。東京中心部の百貨店が、中国人向けに改装した売り場を日本人向けに改装し直したり、高級化粧品売り場をカウンセリング中心の売り方に改めたりと、インバウンド消費の動きに翻弄されているのが、日本の小売業の現状だ。

外国人観光客のトレンドの変化 「消費から体験」へ

外国人観光客、とりわけ中国人観光客のトレンドは、最近までの高品質な日本の製品を日本で買う、といった消費一辺倒でハイテンションな観光から、日本の「気候」「自然」「文化」「食」に触れる、落ち着いた「体験型」の観光に移行しつつある。日本政府観光局(JNTO)が発表した2016年7月の訪日観光客数(推計)は、約230万人と、去年7月と比較して19.7%の伸び率を示した。また2016年1月から7月までの累計訪日観光客数は、約1400万人と去年の同じ時期と比べ26.7%と大幅に増えたのだ。

爆買いブームが去ったにもかかわらず、依然として観光客の増加が続いていることからも、「買い物」という日本にとって直接的に経済効果の高い観光目的でなく、日本の文化や本質に触れる旅行をする外国人観光客が、確実に増えているのだ。

訪日観光客で注目の「ラブホ活用」

政府としても、訪日観光客を増やすことは、重要施策の一つである。2016年3月に開催された「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」では、訪日外国人観光客数を2020年に4000万人、2030年には6000万人とする目標を打ち出したのだ。安倍首相が掲げる経済改革の目標であるGDP600兆円を達成するため、インバウンドの観光を起爆剤にしたい目論見だ。

その一方、インバウンドの訪日観光客が増えて問題になるのが宿泊場所の不足である。ホテル業界は中長期的に見て増え続ける観光客をさばくため、ホテルの新築や増床など打てる手段はとってきたが、実際のところ、訪日観光客の増加割合に対して客室増加が追いついていないのが現状だ。

そこで驚くことに宿泊場所不足に一役買うのが「ラブホ」である。

政府は2020年東京五輪、パラリンピックに向け、外国人観光客の増加によっておこるホテル不足の解消を目指し、稼働率に比較的余裕があるラブホテルの運営者がこれを観光客向けの一般ホテルに改装する場合、条件付きながら資金面で後押しする方針を固めた。

新たなホテル建設を待つより、既存の建物を活用した方が手っ取り早く、費用対効果が大きくなる点が大きなメリットだからだ。一般住宅でも、新築から中古への流れができつつある今、既存の建物を活用する柔軟な発想で、今後も増え続けることが予想される訪日観光客に対応することは、特別突飛な発想でもない。

日本の国際化に一役買うか? ソフト面での充実も必要