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(写真=PIXTA)

中国の地方紙はこのところ連日のように、反ネット詐欺犯罪キャンペーンを張っている。最高人民法院、最高人民検察院、公安部、工信部、中国人民銀行、中国銀行業監督管理委員会の6部門の連合による「電信網絡欺騙犯罪の防止と打撃に関する通告」発布の影響が大きい。その内容を確認してみよう。

ネット詐欺の現状、振り込め詐欺多い

今年1~8月までに、全国で摘発されたネット詐欺案件は7万1000件に及び、前年比で2.4倍に急増した。捜査を受けたのは3万8000人でこちらは前年の2.5倍である。被害額は16億5000万元、事前に損失を免れた額は36億4000万元に達した。

日本と同様目につくのは、銀行ATMを舞台とするケータイ誘導による振り込め詐欺だ。銀行ではATMに人員を配置し、未然に防ぐケースが増えている。中国建設銀行の某支店では、女子大生が詐欺に合い送金寸前だったが、支店係員が声をかけ事なきを得ている。

一般に被害者の多くは年配者である。老年層の苦手なATMの英文パターンへ誘導された例もある。磁気カードの情報を盗みニセカードを作って使用する従来型も、依然として行われている。

「通告」の中身、注目ポイント

「通告」はこうした状況にストップをかけようというもので、以下そのポイントを挙げてみる。

  1. 施行される11月1日以降は、ネット詐欺犯罪者に対して、一切の違法活動をに対し厳罰を科す。ただし10月31日までに犯罪行為を供述した者の処罰は軽減される。
  2. 電信企業(転売業者を含む)には、厳格に顧客の実名登録を義務付ける。実名率を10月末には90%、年末には100%としなければならない。そして個人の契約は、1電信企業あたり1名義に名寄せをする。また電信企業の有効なSIMカード販売も1人5枚までに制限される。
  3. 商業銀行にはデビットカードの厳重管理を求める。同一顧客に同一銀行が発行するデビッドカードは、12月1日以降4枚までに制限される。
  4. 銀行振込みに要する時間を24時間に延長し、その時間で口座凍結や調査を行い、損害の奪回を図る。

この中で注目されるのは4だろう。

顧客に不便を強いる送金時間の先送り

ATMでの銀行間送金は通常2時間以内に終了する。同一銀行間なら10分で済む。顧客の便宜を図るのため時間を短縮してきたが、これは犯罪者にも有利に働いている。

今回はこの時間をを24時間確保する。顧客が口座に異常を感じ申し出があれば、この時間内に解決策を実行する。

中国商工銀行の幹部は、時間延長は応急処理の時間を確保して詐欺犯罪に対応し、顧客口座の安全を保障するものであると発言している。「顧客サービスが初めて不便な方向へ後退することについてはどう思うか」との質問には、「緊急を要する場合はネット銀行またはスマホ銀行の口座を利用してほしい」と答えた。

このように「通告」は、実名制の厳格適用と銀行送金の時間延長を柱とし、詐欺犯罪を防止する、というものだ。

しかし顧客に不便を強いるということは、優秀な金融犯罪者たちに新しい活動のステージを与えるに違いない。何しろ銭金に関する中国人の才能には際限がない。現状は、少しでも混乱を防ごうとマスコミがこぞって協力している印象である。年末の新しい情勢に注目したい。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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