追加緩和を急ぐ局面にあらず

2016年度の大企業設備投資計画は前年比+6.3%となり、4-6月期の+6.2%から大きな変化はなかった。

7-9月期の全規模全産業の雇用判断DIは-19と、4-6月期の-17から雇用不足感が更に強くなり、先行きも-22となっている。人手不足により、企業は設備・機器の省力化投資を進めなければならなくなっていることも、設備投資の支えになろう。日銀のマイナス金利政策の副作用があれば、金融機関の収益を圧迫することによる、貸出態度の消極化に現われるはずだ。

しかし、7-9月期の中小企業貸出態度DIは+21となり、4-6月期の+19から更に上昇し、副作用は明確には確認できない。バブル期の1989年10-12月以来の水準である。マイナス金利政策の導入後、トレンドとして上昇を続けており、日銀の量から金利への政策転換を後押ししていると考えられる。

貸出態度DIは雇用の拡大を牽引するサービス業の動向を表し、失業率に明確に先行することで知られている。貸出態度は引き続き極めて緩和的であり、企業の事業拡大を支援し、失業率の更なる低下、そして賃金上昇を先導する形を維持するだろう。

企業活動は底割れを開始し、持ち直しのきっかけをつかもうとする局面にあり、デレバレッジやリストラが再発するほど著しく悪化していないことが短観で確認された。

日銀が目先、追加金融緩和を焦るような状態ではなさそうだ。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト

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