世界金融危機も一服してアベノミクスによる大規模な金融緩和によって円高という言葉は世間から薄れつつある2014年初頭ですが、1年半ほど前までは超円高と言われドル円が過去最安値を更新するなど円高一色だったのを覚えていますでしょうか。円高は日本経済にとってはアキレス腱の様な物です。海外から原料を輸入して付加価値を付けた製品を世界に輸出する事で日本経済は成り立っています。円高になると輸入コストは下がりますが、輸出した際のもうけが目減りしてしまいます。さてこの円高というのはなぜ起こるのか一緒に考えてみましょう。

円高の様々な要因

円高になる理由は何なのかとインターネット等で調べてみると実に様々な説があります。日本が経常黒字国であるから、日本の金融システムが安全だから、日本は高齢化社会だから等、色々な説がありますが、今回は基本的な事のみご紹介しておきたいと思います。

まず1つ目は政策金利です、金利の高い通貨と金利の安い通貨どちらを預金で持っておきたいかと聞かれれば10人中10人が金利の高い通貨を選ぶでしょう、なぜなら利子が多くもらえるからです。何のリスクもなく低金利通貨を売り、高金利通貨を持っていられるならば誰もがそうすると思いますが、為替リスクがある為そうはなりません。

日本の政策金利はバブル崩壊以降ゼロ金利政策を取っていますので、殆ど変化はありませんがアメリカでは政策金利がこの10年間で大きく変動しています。もちろんアメリカの政策金利が高い時はドルが買われますので、ドル円レートは円安に振れます。私達が円高と大騒ぎしている現在はアメリカと日本の政策金利の差が殆ど無くなっている為に起こっている事が理由の1つとしてあげられます。

2つ目はマネタリーベースの変化により為替相場が変化します。マネタリーベースとは世界各国の中央銀行が発行している自国通貨の量の事で、この量が変化すると当然通貨の価値も変化します。アメリカドル等はリーマンショック後の2年間でアメリカドルの流通量を3倍にしています。ドルを刷りまくって市場をジャブジャブにしたのです。これに対して日本もマネタリーベースを増加させていますが、1.2倍くらいとアメリカに比べると小規模になっています。このマネタリーベースの差がそのまま効いてしまうとドル円のレートは50円程度となり、日本経済は恐ろしい事になってしまいます。序章では様々な要因のうち基本的な2項目に着目しましたが、世界金融危機で起きた円高の原因はまた少し違った物でした。

リスク回避としての円高

アメリカのサブプライムローンを発端としたデリバティブ商品への信用不安は世界中を駆け巡りました。何が怖いかというと何処にそういった不良債権が組み込まれているのか非常に分かりにくい金融商品が市場にはびこり、マーケット全体が疑心暗鬼になってしまったのです。サブプライムローンという問題が多い住宅ローンを販売していたのはアメリカのはずなのに、最初にサブプライム商品によるショックを受けたのはフランスのパリバ銀行だったのです。複雑な債権が組み込まれたデリバティブ商品の時価が付けられなくなってしまい、それら商品の解約が中止されてしまったのです。こういった信用不安が起きると高金利通貨は逃避先として低金利通貨に向かいます。この時ドルもユーロも政策金利が5%もありましたので3大通貨の内でいちばん低金利な円が逃避通貨として選ばれてしまったのです。