9月の米雇用統計が間もなく発表される。

次回のFOMC(米連邦公開市場委員会)は11月1、2日に予定されているが、翌週の8日に大統領選挙の投票日を控えていることから、利上げを実施するとは考えづらい。利上げは早くても12月のFOMCと考えると、それまでに雇用統計の発表は今回を含めて3回あることになるので、今回の結果は中間報告の位置づけとなる。

まずは完全雇用の状態にあるのかどうかの確認作業が優先されるが、雇用の拡大が続いているのかどうかもポイントとなる。

完全雇用は達成されているのか?

FRB(米連邦準備理事会)のスタンレー・フィッシャー副総裁らが指摘している通り、米国は完全雇用に近い状態にあることは間違いないだろう。しかし、ジャネット・イエレンFRB議長は、9月のFOMCで利上げを見送った理由として、労働市場にはまだスラッグ(緩み)があると指摘している。

こうした認識のズレが生じているのは、失業率と雇用者数、賃金の動きがかみ合わないからだ。

まず、失業率を見ると8月まで3カ月連続で4.9%と下げ止まっている。昨年10月に5.0%まで低下した後、1年近くの間おおむね横ばいで推移していることから、既に完全雇用に達している可能性がある。

その一方で、雇用者数は8月までの3カ月平均が23.2万人増加と人口の増加を吸収するのに必要な10万人程度を大きく上回っている。にもかかわらず、8月の賃金は前年同月比2.4%上昇と7月(2.7%上昇)から伸び率が低下した。

雇用の大幅な増加で賃金の伸びは加速する「はず」であるにもかかわらず、実際は鈍化しているということは、労働市場にはまだ「緩み」が残っており、完全雇用には達していないと推測されるというわけだ。

したがって、12月の追加利上げを実現するためには、とにもかくにも賃金の伸びが加速する必要がある。

気になるインフレ率の動き

雇用者数の増加を過去12カ月平均で見ると、2015年2月の26.2万人増加をピークに今年8月の20.4万人増加まで緩やかに鈍化していることが分かる。

失業率の動きにも注意が必要だ。失業率の上昇は景気のピークアウトを示唆している可能性が高く、特に前年同月を上回るとその可能性が強まる。失業率が年末にかけて5.0%を上回るようだと、年明け以降にリセッションが始まることも想定されてくる。

イエレン議長は9月のFOMCで利上げを見送った理由として、インフレ率が目標となる2%に達していない点も指摘したが、ここにも問題がある。

8月のCPI(米消費者物価指数)は前年同月比1.1%上昇した。7月(0.8%上昇)に比べて0.3%ポイントの上昇である。食品とエネルギーを除く8月のコアCPIは2.3%上昇となり、昨年11月以降は2.0%を上回る伸びを続けている。CPIの今後については、原油価格の動向次第で2.0%に向けて上昇する可能性もある。