個人消費にも陰りが見え始める

賃金が伸び悩むなかで物価がのみがジリジリと上昇した場合、家計の購買力が低下して個人消費にマイナスの影響を与えることが懸念される。最近の経済指標を見ると、景気をけん引してきた個人消費にも陰りが見え始めている。

まず、個人消費のバロメータとされる自動車販売が失速している。米自動車販売台数は9月まで2カ月連続で前年を割り込んでおり、2016年は通年でも前年を下回る公算が大きい。8月の小売売上高も前月比0.3%減少と予想を上回る減少となった。

医療費や家賃の上昇に加え、最近では原油価格も持ち直している。雇用者数の増勢に陰りが見られるなかで、個人消費が息切れするようだと、雇用の拡大も頭打ちとなる恐れがある。

株価伸び悩みなら「トランプ・リスク」再浮上も

雇用統計の結果に対する株価の反応はネガティブとなる公算が大きい。雇用増加が予想を上回れば、利上げ観測が強まる一方で、予想を大きく下回るようだと景気の先行きが心配され、いずれにしても株安を誘うだろう。

9月26日に開かれた大統領選のテレビ討論会では共和党のドナルド・トランプ候補に対する大統領としての資質が改めて問題視されたが、最近では「税金逃れ」も批判の対象となりさらに支持率を落としている。

とはいえ、株価が伸び悩むようだと、トランプ候補が息を吹き返す可能性がある。

9月30日付けでブルームバーグが配信した記事によると、1944年から2012年までの18回の大統領選挙において、その年の7月31日から10月31日のS&P500株価指数の動きを調べてみると、上昇したのが11回でそのうち9回で政権が維持された。一方、下落した7回のうち6回で政権が交代している。

10月4日現在、S&P500株価指数は年初来では5.2%上昇しているものの、8月以降では1.1%下落している。株価は景気のバロメータであり、株価の低迷が政権交代を促しても不思議ではない。現在は民主党政権であることから、10月も株価が伸び悩んだ場合には、共和党のトランプ候補には追い風となる。

雇用統計の結果が株価を支援できず、大統領選が再び接戦となった場合、「トランプ・リスク」がドル安を招く可能性が高まることも否定できない。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)

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