8月7日、渋谷パルコがその43年の歴史に幕を降ろした。

再開発のための休業とはいえ、その全盛期を知る筆者としては複雑な想いだ。

渋谷パルコといえば、かつては若者のファッション文化の発信地だった。バブル期にはDCブランドの聖地と呼ばれたこともある。パルコ劇場やパルコ出版を有し、スペイン坂など宇田川町から先端の文化、サブカルチャーも発信していた。パルコへ向かう「公園通り」はイタリア語で公園を意味する「PARCO」に由来している。

10月3日、パルコ <8251> は2017年2月期の業績を下方修正した。主力のショッピングセンター事業の減収減益が予想を超えていたためだ。パルコはどこに行こうとしているのだろうか?

「PARCO」のRが消えて「PA CO」に

今年の6月末、渋谷パルコの看板から「PARCO」のRが消え落ち「PA CO」になった。パルコは8月に閉店を決めていたので、誰かが盗んでしまったのだろうか? 修理するお金もないのだろうか? と渋谷の街で話題になっていた。

7月6日に消えた「R」を鷲づかみにしたゴジラが渋谷パルコの壁面に登場。文化を発祥し続けたパルコの閉店最終セールの小粋な演出だったのだ。パルコは常に広告でも最先端を行っていた。その渋谷パルコの最後の仕掛けだった。

前述の通り、渋谷パルコは8月7日に閉店した。ただ、あくまでこれは再開発のための休業だ。2019年秋の開業を目指し、東京都の再開発事業として「渋谷パルコパート1」「パート3」の2棟がオフィスビル併設の商業ビル1棟として生まれ変わる。文化拠点として「パルコ劇場」は存続する予定だ。

パルコは今期の売上、営業利益を下方修正

パルコが10月3日に発表した2017年2月期上期(3月〜8月)の業績は、売上1340億円で前年同期比2.0%減、本業の利益を示す営業利益は65億円で同2.5%減だった。同時に通期の売上を2801億円から2710億円の1.9%減に、営業利益を135億円から129億円の1.0%増に下方修正した。

8月に渋谷パルコを一時休業する一方で、7月にJR仙台駅前に仙台パルコ2を開業したが全体の不振は補いきれていない。パルコの得意とするアパレル市場の停滞が影響している。

気になるのは、渋谷パルコの3年間の休業による業績への影響だ。渋谷パルコが全体の売り上げに占める割合は6%程度。減収分は、今年開業の仙台パルコ2と2017年秋開業予定の上野パルコでほぼカバーできるとしている。むしろ、現在はパルコとは別業態の「ZERO GATE」という中低層商業ビルの出店を進めており、全体の採算は改善する見込みだという。

パルコの株価は、渋谷パルコ閉店を控えた7月1日に年初来安値の801円をつけたものの、その後反発し9月23日には1000円まで戻している。10月3日に下方修正を発表した日も10円高の1.1%高と売られなかった。渋谷パルコの閉店、今期の業績の伸び悩みは完全に「織り込み済み」で、むしろ今後の期待感で買われているのだろう。