日銀が2年で2%の物価上昇をターゲットとして異次元金融緩和を2013年に導入したが、原油安などの影響を受け、目標達成時期は反故にされ、伸び悩む賃金や物価の状況に消費者の間では節約志向が高まり、デフレへの逆流懸念が漂う。
この状況下で、小売り最大手のイオン <8267> は、2017年2月期の第2四半期決算で53億7200万円の赤字(前年同期は21億2900万円の黒字)となった。中核事業である総合スーパーの業績が振るわず、中間決算としては7年ぶりに赤字へ転落。スーパーの巨人イオンが苦戦を強いられるのを横目に、ディスカウントストアを展開するドンキホーテホールディングス <7532> は、2016年6月期決算で27期連続の増収増益を達成している。消費者が財布の紐を締める傾向が強まる中、成長を続けるドンキホーテの強さに焦点を当てる。
ライバルの不振が「居抜き物件」獲得のチャンス
ドンキホーテの決算の詳細をみると、売上高が前年同期比で2ケタ以上の伸びとなる11.1%増の7596億円、純利益は同7.7%増の249億円となった。
消費者の節約志向が高まる中、食品や日用消耗品などの生活必需品の商品ラインナップを充実させ、若者が中心だった顧客ターゲットをファミリー層にまで広げた。卵や牛乳などの日配品の販売を強化することでリピーター客を増加。食品の売り上げは前年比で16.1%アップと大幅に伸びたほか、洗剤や歯ブラシといった日用消耗品もファミリー層に好評で、日用雑貨品の売り上げも同14.6%増の2ケタアップとなった。
2016年8月単月の既存店売上高は、前年同期比で0.4%減、客数は同1.1%減と伸び悩んだが、新規出店を含む全店では売上高は同8.2%増となった。その新規店は、2016年6月期で過去最高となる40店舗をオープン。
拡大路線を続けるドンキホーテにとって、新店舗は知名度やシェアをアップさせるのに鍵となるが、店舗拡大の裏に1つの緻密な戦略が描かれている。景気の停滞や個人消費の落ち込みで、総合スーパーや家電量販店は不採算店舗の閉鎖を余儀なくされる。小売業にとっては、重苦しい雰囲気が漂う撤退も、ドンキホーテにとっては低コストで新規店をオープンできる千差一偶のチャンス。
「居抜き」と呼ばれる手法で、別の事業者が運営していた店舗を、ドンキホーテがそのままの状態で引き取る。売り場の内装工事などのコストを浮かせた上で、新規出店を果たすことができる。以前の業者が販売効率をアップさせるためにデザインした内装が残るが、ドンキホーテは、売り場の状況に合わせて商品を陳列し、コスト削減を徹底する。
ドンキホーテの店舗を一度でも訪れたことがある人ならば、天井にまで届きそうなくらい積み上げられた商品に、迷路の中を進むような独特の雰囲気を味わったことがあるだろう。この圧縮陳列と呼ばれるディスプレイは、来店客の滞在時間を長くし、購買を誘発する効果がある上、居抜き物件の内装に合わせた商品陳列を可能にさせ、コスト削減に一役を買う。