不動産テックは定着するのか?

ITベンチャーを中心に、さまざまな不動産テックサービスが登場しています。しかし、不動産テックは本当に定着するのでしょうか。これには懸念点もあります。

2015年11月、「おうちダイレクト」というサービスが開始されました。おうちダイレクトは、Yahoo!JAPANとソニー不動産が共同開発した不動産売買プラットフォームです。売主は「システム推定価格」を使って所有物件の推定成約価格を割り出すことができ、売却にかかる仲介手数料が無料となります。買主は従来通り仲介手数料が掛かるものの、売主側にサイト上で直接質問が可能です。

当初、ソニー不動産とYahoo!JAPANの両社は、米国のような「中古物件の流通の活性化」を目的に掲げていました。仲介会社を通さず、売主側が自由に価格を設定できるシステムは画期的である一方で、業界内からは反発の声も聞かれました。現在はサービス開始から半年以上が経ちますが、登録物件は数十件にとどまり、活用されているとは言いがたい状況です。

これまでのところ、おうちダイレクトがあまり活用されていない理由はいくつか考えられます。米国と日本の不動産流通市場の違いもその一つでしょう。米国では中古住宅の流通戸数が全体の約90%であるのに対して、日本は約15%程度です。

また、米国では不動産業者以外に物件の取得・売却などに専任のエージェントがいる形態が一般的ですが、日本では不動産業者がすべてを行っているのが現状です。

さらに、長い間「情報の非対称性」が存在した日本では、一般消費者が不動産取引を行うための知識や経験を十分持ち合わせていません。こうした状況では、彼らが不動産業者を通さず直接売買するというのは、いささかハードルが高すぎたのではないでしょうか。

不動産テックがいかに便利で効率的であっても、業界の商習慣や消費者動向をよく見定めなければ、それらを覆して新しいサービスを定着させるのは難しいということでしょうか。

まとめ

不動産テックのサービスは、すでに不動産業界内のあらゆるジャンルに登場している状況ですが、中には「おうちダイレクト」のように、ユーザーの支持を受けられず苦戦している事例も見受けられます。しかし、不動産テックの持つ効率性や機能、公平性は、今後ますます求められていくと考えられます。

IT化が遅れていた不動産業界も、ITベンチャーなどと協業しながら、新しいサービスの開発が急務となりそうです。 (提供: TATE-MAGA

【関連記事 TATE-MAGA】
不動産投資の新手法・Airbnbを利用する前に知るべき3つのこと
次々と建てられているアパート 人口が減っているのになぜ増加?
投資初心者が知っておくべき、アパート経営をスタートさせるまでの流れ
アパート経営とマンション経営 10の違い
気になるマンション・アパートオーナーの平均的な年収とは?