今、投資の世界はかつてないほど情報が氾濫しており、個人投資家は感覚が麻痺してしまっている。ネットで検索すれば、誰でもカンタンに早く大きく儲けられるという情報が溢れており、最初のうちは疑いを持つ人も、いつしかその情報に慣れてしまい、知らず知らずのうちに大きい儲けを短期間で追い求めはじめる。
初心者投資家が、早く大きく儲けられるわけなどないのだが、感覚が麻痺してしまっているので、修正しようにも本人の力だけでは無理なのだ。このコラムでは、「投資の利益」の本質について考え、個人投資家の意識の矯正を計ってみたい。
売買の利益は2つの要素に左右される
投資における損益とは、一定の回数の売買が行われた後に、その全ての損益が通算されて算出される。この時、最終的な損益に影響を及ぼすのは、その全ての売買の勝率と利益幅である。勝率とは、利益を上げた売買回数を総売買回数で割って求められる。分かりやすく言うと、どれだけ数多く利益を上げられるかという目安だ。一方の利益幅は、単にどれくらいの値幅の利益を上げることができるかというものだ。当然のことながら、全ての投資家は、大きい利益幅を狙って売買を行っている。
勝率と利益幅のコントロールは意外に単純
ここで、勝率と利益幅を意識しながらチャートを確認してみて欲しい。例えば、1つの売買で含み利益を保有していると仮定して、この売買において、より確実に、勝率を高くしたいと考えた時に、今から、より長い時間の保有と、より短い時間の保有では、どちらの方が確実に勝てるだろうか。時間の経過は、長くなればなるほど「不確実性=リスク」を増すので、確実に利益を確定したければ、決済までの時間を短くすれば良い。これが単純に、勝率を高くするコツだ。
市場の値動きにおいて、より短い時間の保有とは、利益幅を大きくするか、小さくするか、どちらだろうか。当然ながら、短い時間の保有では、利益幅は小さく限定される。つまり、より確実に勝率を高くする売買とは、利益幅を小さく限定し、短い時間の中で完結する売買である。
次に、同じ例において、保有している含み利益を、より大きい利益幅まで伸ばしたいと考えた時には、今から、より長い時間の保有と、より短い時間の保有では、どちらが大きい利益幅を狙うことができるだろうか。値動きとは、時間の経過とともに大きくなっていく。大きい利益幅を狙うためには、決済までにより長い時間保有することが必要だ。これが、利益幅を大きくするコツだ。
それでは、利益幅を大きく伸ばしたいという気持ちから、より長い時間の保有を行った時、この利益を確実に手に入れる可能性は保証されているだろうか。市場においては時間の経過は、前述のとおり「不確実性=リスク」を増すので、長く保有すればするほどその利益を手に入れる確率は低くなる。つまり、より大きい利益幅を狙って、長い時間の保有を続ければ勝率は下がる。
高い勝率を狙うことは、利益幅を限定することを意味し、大きい利益幅を狙うことは、勝率が低くなることを許容することなのだ。この時点で、確実に大きく儲けるということは、市場の値動きの理に適っていないことが理解できる。投資における利益とは、高い勝率を狙うか、大きい利益幅を狙うか、極端に考えれば、2つから1つを選ぶことからスタートする。