関西大学の宮本勝浩名誉教授が発表した「ネコノミクスの経済効果」と題した研究は、国内で大きな波紋を呼んだ。ご存知、安倍晋三首相の包括的経済政策「アベノミクス」にネコをかけた造語だ。宮本教授によると、近年の猫ブームのおかげで、2015年の一年間で約 2 兆 3162 億円の経済効果があったという。まさに、「ネコさまさま」である。
この「ネコノミクス」、太平洋を挟んだ愛猫国の米国では、どのように見られているのだろうか。米メディアの報道や、日米のネコ文化比較から探ってみよう。
「ネコノミクス」認知度はいまひとつ
米国では、アベノミクスが成功か失敗かはさておき、内容はよく知られている。大胆な金融緩和策や財政出動、それに構造改革を推進して景気浮揚を図るものだと、しっかり認知されている。だが、ネコノミクスの認知度はイマイチだ。コンセプト自体が新しいことに加え、まじめに受け止めてもらえていない印象だ。
とはいえ、注目度は高い。一番知名度の高いネコノミクスの例は、2015年に永眠した、和歌山電鐵貴志駅の初代「たま」駅長だ。たまの存命中から、「年間1000万ドル以上のマネーを動かす、すごいネコ」として、CNNをはじめ、高級紙『ワシントン・ポスト』など、多くのメディアが競って報道していた。
たまが2015年の6月に亡くなった時も、その数奇な生涯が網羅的に紹介されただけでなく、「駅長」がさびれた鉄道や街にもたらした経済効果が功績として報じられ、「死後は神に祭り上げられた」と、理解不能なものを好奇の目で見るような論調で扱われた。キリスト教文化の米国では、ネコに愛情や友情は抱いても、「死後に神となる」という概念はないからだ。
さらに、たまがなぜ、そこまでブームになったのかも理解できないようだ。純粋にかわいく、楽しいという憧憬と、直接的には言わないが、「こんなものに大挙して群がる日本人は、ちょっと変わっている」という見方が同居している。