ラップ口座
(写真=Thinkstock/Getty Images)

2016年6月末時点のラップ口座の資産残高が4年ぶりに減少に転じた。ラップ口座は、アベノミクスが始まるとともに人気化、2015年末には5兆円を突破した。運用業界では預かり資産を増やす中核商品として各社とも注力しており残高を急進させている商品だった。ラップ口座に何が起こっているのだろうか?今さら聞けないラップ口座の内容と現状に迫りたい。

ラップ口座は資産管理を一任するアカウント

投資顧問業協会が9月8日に発表した2016年6月末時点の投資運用業者の契約資産では、ラップ口座の運用残高は5兆7596億円だった。2016年3月末比で180億円減(0.3%減)と小幅ながら前四半期末比でマイナスに転じた。前期比マイナスは4年ぶりだ。

ラップ口座とは、個人が証券会社や信託銀行と投資一任契約を結び、資金の運用から管理までを一括して委託する資金運用の口座だ。基本的には富裕増向けのアカウントである。顧客の資金量、運用目的、リスク許容度などに応じ、アセットクラス別(投信、株、債券など)の分散投資などの売買をすべて一任する。資産運用のアドバイスや口座管理など総合的なサービスなので、「包む」「包括する」といった意味の「WRAP(ラップ)」という名称で呼ばれている。

投資家にとっての最大のメリットは、自分の運用方針に合わせて、アセットアロケーションをプロに任せられることだ。

たとえば証券最大手の野村證券では、ラップ口座として野村ファンドラップと野村SMA(エグゼクティブ・ラップ)を用意している。ファンドラップでは、積極的にアクティブファンドに投資する「プレミア」が1000万円から、インデックスファンドに投資する「バリュー」が500万円からとなっている。SMAに関しては5000万円からの募集となっている。

手数料体系は、管理残高に対する運用フィーを払う仕組みであり、個別の投信や株の商いなどの手数料はチャージされない。したがって、証券会社が売買手数料のために無理な回転売買をするといった売買に巻き込まれることなく、長期運用が可能だ。運用フィーはだいたい2%程度。運用フィーと投資先の投資信託等の管理手数料がチャージされる。

デメリットは、運用フィーと管理フィーを合わせると年間3%程度になることで、決して安い手数料ではないことだ。このフィーは、自分で運用ができる人にとっては、投信を買うよりも割高になることが多いだろう。

ラップ残高はアベノミクスで急増

ラップ口座は、2012年末までは5000億円程度の残高だった。日本がバブル崩壊後の失われた20年といわれるさえない市場だったため、個人の投資意欲が盛り上がらなかったためだ。

2012年末に第二次安倍政権がはじまり、アベノミクスが始まった。さらに、2013年に日銀の異次元緩和が始まり、運用に対する期待感が一気に高まったため、ラップ口座の残高も急増し始めた。金融当局が、証券会社に対し、投信などの売買手数料を追求するよりも、資産残高を増やしてその管理フィーを積み上げる営業スタイルを誘導したこともラップ口座の資産増に追い風となった。利用者の多くは60歳以上の高齢者だ。退職金など老後資金の安定した運用先として人気を集めてきた。

ラップ口座の資産残高は、13年末には1兆円超え、14年末には3兆円超え、15年末には5兆円を超え、5兆6711億円に達した。16年3月末には、伸びは鈍化したが5兆7776億円だった。

6月末時点での口座数は50万1997件と口座数は過去最高を更新している。1件あたりの契約は1151万円。証券会社によっては500万円や300万円などハードルを下げてきてはいるが、やはり基本は一口1000万円以上で富裕層向けの商品だ。