中国ではホワイトカラーの賃金が上昇を続けている。香港メディア「南華早報」が智聯招聘網(大手求人情報サイト)のレポートを伝えた。ホワイトカラー層の求人状況から、経済の実態に迫ってみよう。
北京・上海のホワイトカラー求人は引っ張りだこ
智聯招聘は民間の人材紹介会社大手で、米国ニューヨーク証券取引所にも上場を果たしている。毎日350万件に上る求人をアップロードしていて、特にホワイトカラー求人に強い。したがって同社データは、人力資源社会保障局など政府機関発表の思惑を加味したものではなく、より実勢を反映したものと見てよい。
レポートによると、ホワイトカラー労働力需給はひっ迫している。企業側は大々的に募集しているが、供給は追い付かない。欠員は増え、特に経験のある即戦力のホワイトカラーはまったく足りていない。
中国本土におけるホワイトカラー職位の数は、2016年第1四半期、おおむね48人に1人だった。それが第二四半期は45人に1人、第3四半期には38人に1人と、どんどん厚い層になっている。それに合わせ賃金も上昇を続け、ホワイトカラー報酬最高都市・北京の平均月給は9886元(約15万円)、上海は9642元、深センは8582元となった。北京・上海は1万元の大台突破目前である。
大きな地域差
第三四半期の求人を分析すると、最もホワイトカラー需要の多いのは、北京・上海・深セン・広州のいわゆる「北上深広」であった。
しかし地域経済の中心都市、中国でいう「二線級都市」でも需要は極めて旺盛である。杭州、成都、天津、西安、南京、武漢、などだ。西部の中心都市・西安の場合、平均5947元と北京・上海とは大きな開きがある。同市は全国主要34都市中30位、賃金は最下位レベルだ。しかし不動産関連は最も人手不足にあえぎ、医療・美容部門は最も賃金上昇が激しい。
なおホワイトカラー全国平均では、第二四半期の7233元から4.1%アップし、7531元となっている。
その一方で東北の遼寧省は、今年の上半期で経済規模が1%収縮した。瀋陽市などの労働市場は極めてきびしい状況にある。
景気見通しは「まちまち」
智聯招聘網の首席執行官K氏は「中国経済は構造調整下の平穏にあるが、就職市場は第三四半期も引き続き改善している。第四四半期もこの趨勢は変わらないとみている。」と述べている。
また上海美世保険経紀有限公司の社長S女史は「労働市場だけを見て、2017年の景気を楽観するのは早計に過ぎる。」「今は順調なホワイトカラー求人も来年には逆風にさらされる可能性もある。なぜなら経済の下降圧力がまだ消えていないからだ。例えば誰もが、ホットな最先端業界と認識している、インターネット関連でも求人の伸びは下降している。これは事実なのだ。」と発言している。
確かにネット辞書で知られるネット業界大手の「百度」の決算はあまり良くない。第三四半期決算では、売上前年比▲0.7%となり、は2005年の創業以来初めてダウンした。(ただし利益は△6.3%)これにより他のネット関連大手の決算もにわかに注目されることになった。
中国景気の不確定要素がまた1つ増えた。実態を知るには統計数値ではなく、経済人の発言の中から本音を拾い集めるしかない。現状はそれらも強弱まちまちのまだら模様である。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)
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