オランダ政府が牛糞を利用したバイオ燃料(合成ガス)の製造を促進するプロジェクトを開始した。1億5000万ユーロ(約171億3124万円)の予算を組みこみ、4年以内に全燃料の14%をバイオ燃料化することを目標としている。

プロジェクト開始からわずか20日間で、3世帯に1年間燃料を供給するに十分な9342キロワットの合成ガス製造に成功。大規模な農場を中心に着実に成果をあげている反面、問題点も指摘されている。

バイオ燃料化の問題点はコスト 化学薬品への懸念も根強い

オランダ経済省による新たな環境保護プロジェクトは、オランダの温室効果ガスの10%が農業、特に乳業によって排出されている状況の緩和策として打ちだされた。

オランダはスイスやフランス、ニュージーランドに次ぐ世界屈指の乳業国だ。このプロジェクトの先導者でもある蘭最大手乳業メーカー、 フリースラント・キャンピナのデータによると、年間平均7400万トンもの乳製品を製造している。

従来は畑などに牛糞を撒いて処理しているが、住人を悩ませている問題は悪臭だけではない。牛糞に含まれる硝酸塩やリン酸塩が地面の水分と混じりあって微細藻類を急激に発生させ、やがて温室効果ガスを発生させる。公害の原因地域として、以前から国際環境保護に反するとの懸念が高まっていた。

牛の数が住人の2倍という北西部、フリースラント州のような酪農地域で、こうした問題がより深刻化しているのは当然の結果だ。しかし牛の数を極端に減らすとなれば死活問題に関わる。

そこで着目されたのがバイオ燃料化。温室効果ガスを抑制させながら、再生可能な燃料を製造できるという一石二鳥の利点がある。政府の支援プロジェクトは農家に「嫌気性消化装置(有機物の生物分解を行う機械)」をリースし、最初の1年間は固定価格で再生されたバイオ燃料を買いとるというものだ。

約750平方メートルの農場で、年間約1万ユーロ(約114万円)の「牛糞バイオ燃料」の売上が見こまれているという。農場の規模が大きくなればなるほど、牛の頭数が増えれば増えるほど、バイオ燃料収入が高くなるというわけだ。

しかし素晴らしい発想のように思えるこのバイオ燃料化に、疑問を唱える声もあがっている。ひとつはバイオ燃料は従来の石炭やガスといった燃料と比べ、はるかにコストがかかるという点だ。また農家が使用する化学薬品の量を制限しないかぎり、環境汚染問題の根本の解決にはつながらないとされている。

これらの問題を含め、今後各国で画期的な環境対策が生みだされることに期待しよう。(ZUU online 編集部)

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