ドコモ,iモード
(写真=PIXTA)

NTTドコモ <9437> がiモード対応携帯電話の販売を在庫限りで終了すると発表した。iモードのサービスそのものは継続されるが、20代以下では利用したことがないという人もいることだろう。iモードの歴史と果たした役割について振り返る。

携帯電話からインターネットに接続する初のサービス

NTTドコモのiモードは、携帯電話からインターネット上のサービスを利用可能な世界初のサービスとして1999年にスタートした。

当時は携帯電話で送ることができるメールには制限があり、iモード登場前には「10円メール」といったものもあった。iモードではインターネットに接続するためのゲートウェイを設置し、携帯電話からの通信をゲートウェイ経由でインターネットに接続する。それまでの通信時間による課金形態から通信量による課金形態へと変わった。

当時は小さな通信量ゆえ安価にやりとりできる上に、iモードメール同士では絵文字などもやりとりできるという事から爆発的に普及した。またiモードメニューからは各種のコンテンツサービスが利用でき、それぞれのサービスには利用料としての設定が可能となり、毎月の携帯電話利用料金に合算する形で徴収された。

初期のコンテンツは端末の性能限界により大掛かりなものはできなかったが、ニュースサイトやモバイルバンキングなど、今でも見られるコンテンツサービスの原型が登場している。

特にモバイルバンキングは衝撃的であり、家賃の支払いにATMに並ばなくて済むという理由だけでiモード対応の携帯電話を契約した人もいたようだ。

独自の進化で新しいビジネスモデルを開拓

ドコモ以外の他社も同様のサービスを開始し、ニュースサイトでの画像閲覧などのコンテンツが利用可能となる中で、日本の携帯電話は国際基準とは違う日本独自の技術によって進化を続ける。

携帯電話で使えるインターネットサービスとしては国際的にはWAPなどがあったが、iモード(や他社のサービス)ではあえて一般的なHTMLを使う事によりコンテンツの開発を容易なものとした。iモードを使用するためだけに携帯電話の機能が進化していたわけではないが、リッチコンテンツを使う以上は高精細かつ大画面のディスプレーが適当とされ、携帯電話のカラー化などが海外の携帯電話(当時は主にGSM方式)よりもはるかに早く達成された。

またコンテンツビジネスは内容・種類ともに充実し、先述の利用料の一部をドコモが徴収することにより膨大な利益をドコモにもたらした。コンテンツ提供側も、PCを使うインターネットよりも遥かにユーザ数が多く、料金徴収の仕組みも容易かつ比較的確実なことから、こぞってコンテンツを開発し提供した。

iモードがもたらしたものと弊害

国内のマーケットが端末販売、iモードのコンテンツ販売ともに非常に大きいため、例えば端末開発は国内だけで十分すぎる利益を上げることが可能となり、通信方式の違いもあって海外モデルへの注力と市場開発を真剣に行う必要性は薄かった。

また端末の性能の違いなどから、海外の端末メーカーが日本に進出し、大きな成功を収めることは非常に難しく、当時海外では圧倒的に強かったモトローラやノキアなども、日本で大きく成功した端末はない。

逆にiモードそのものも海外進出を意図したこともあったが、携帯電話の使い方が海外と日本とでは違っていたこともあり、大きな成功は納められなかった。

この状況が一変したのがiPhoneの登場であり、通信規格が3Gの登場で海外とほぼ同じになり、海外端末が日本で売れる状況になってきた。こうなるとコンテンツビジネスを囲い込むタイプのiモードのサービスとの競合は避けらない。iPhoneやAndroidでもコンテンツに対して課金できる技術が確立すると、徐々にiモードの優位性は崩れていく。

iモード端末は段々少なくなり、ユーザーもスマートフォンにシフトしていく。ユーザー数が減ると新たに登場する端末も少なくなる……というスパイラルに陥り、ついにiモード端末の販売は終了することになった。

iモードの歴史的な存在意義

iモードは、まだ携帯電話のディスプレーがモノクロ液晶だった時代に登場し、PCとプロバイダー契約が必須だったインターネットの敷居を大幅に下げることに貢献したことは間違いない。ユーザーにとってのメリット(手軽にインターネットサービスが使える)も大きかったが、それ以上にコンテンツを提供する側のメリット(多くのユーザーに対してビジネス展開が可能)や、ドコモにとってのメリット(システムの利用料を徴収できる)も大きかった。

ユーザーとキャリア、コンテンツホルダーのすべてにメリットがあったサービスだからこそ、iモードは多くの人に使われるサービスとなった。

「垂直統合」「囲い込み」のサービスと言われ、批判されることも少なくなかったが、iモードというサービスがコンテンツをビジネスに結び付ける結果を生み、iPhoneやAndroidで使われているコンテンツビジネスモデルの原型を生み出したという事は、記憶にとどめておいて良いだろう。(信濃兼好、メガリスITアライアンス ITコンサルタント)

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