ディズニーの投資家は「甘やかされている」

一方で、ディズニーには今後注意すべき点も多くある。ディズニーは映画部門のほかに、ABCテレビやケーブルスポーツ専門局ESPNから多額の安定した収入を得ているが、こちらの業績は下がる一方なのだ。人々がテレビ離れを起こし、ネットフリックスなどのインターネット動画配信に流れているため、地上波の広告収入やケーブル専門局の視聴料が打撃を受けている。

悪いことに、こちら方面の業績悪化に対する有効な処方箋は見つかっていないのが現状である。バークレイズ証券のアナリスト、カナン・ベンカテシュワル氏は、米『フォーブス』誌に対し、「安定した事業とされているケーブルネットワーク事業よりも、本質的にムラのある(映画)事業が成長の重要な推進力となっており、(今後もそうあり続ける可能性が高い)」との懸念を語っている。

また、モルガン・スタンレーのベンジャミン・スウィンバーン氏も同誌で、「投資家たちは、映画部門で異例の数年規模のロングランがもたらしている堅調な増益に甘やかされている状態だ」と分析している。

ディズニーにとっての映画豊作年の2016年が終わり、2017年や2018年にも、ディズニー制作の映画は安定的にヒットを飛ばし続けることができるのか、投資家たちは心配なのである。

こうしたなか、映画の成績が落ち込んだ場合に備えて、ディズニーがインターネット動画配信で世界最大手のネットフリックスを買収して、安定した収入源にするのではないかとのうわさが繰り返し流れるのは、自然なことだ。ディズニーは最近、ソーシャルメディア大手のツイッターを買収するのではないかと報じられたが、収益面から見れば、ネットフリックス吸収の方が理にかなう。

克服すべきイメージ問題

さらに、ディズニーはイメージ上の問題も抱えている。11月23日に全米で公開予定のミュージカルアニメ、『モアナと伝説の海(Moana)』(日本では2017年3月10日に公開予定)は、ハワイをモチーフにした南太平洋を舞台に、「生来の航海士である少女モアナが、父の反対を押し切って伝説の島を探索する航海に出る」物語だが、公開を前にこれらの島しょ国先住民から、「文化の窃盗だ」との批判が巻き起こっている。

登場人物の名前や地名から、明らかにモチーフになったと思われるハワイは、そのひとつだ。ハワイ人教育家のヘアラニ・ソノダ=パレ氏は、「アメリカの帝国主義的野望から、米領土となったハワイの伝統文化をグロテスクに歪曲している。ハワイ人にとって神聖な神や事物が、ディズニーのカネもうけの道具とされている。さらに、オアフ島のアウラニ・ディズニー・リゾートは、そうしたハリウッド製の『ハワイ文化』に浸れるところだが、そのすぐそばにあるナナクリ地区には、本物のハワイ人たちが貧困の中に暮らしている」と、強く批判している。

こうした声への対処をディズニーが誤れば、好調だった映画の成績も揺らぎかねない。絶好調だった1月から10月の勢いがこの先も維持できるか、投資家たちは見守っている。(在米ジャーナリスト 岩田太郎)

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