遺言なんてまだ早い!壮年期の人ならそう思ってしまうのも無理はありません。 でも、現実は高齢になれば遺産相続の枠組みはほぼ決まってきます。 若い人ほど、遺産相続のもめごとは多くなるのです。 大切な人を遺産争いに巻き込まないために遺言信託について学びましょう。
遺言書でできること
遺言書は自分の死後、残った人々に託す文書のことです。 しかし、遺言書にすれば何でも思い通りになるわけではありません。 遺言書で法的効力が発生するのは、相続者の身分にかかわる事、遺産の処分にかかわる事、祭祀主催者の決定、遺言執行者の指定など限られた事柄です。 たとえば、婚外子の認知や、相続人の未成年後見人、後見監督人などの指定、相続人の廃除、遺産の処分方法の指定、法定相続人以外への遺贈、遺言者の法事などを執り行う者の指定などは遺言で法的効力が発生する事柄です。
これに対して、「必ず医者になること」とか「必ず〇○と結婚すること」などの遺言をしても法的な効力は発生しません。 適法な遺言書の内容は法定相続に優先します。 法定相続人がいる場合でも、もし、遺言書にそれ以外の人が指定されていれば遺言書通りの相続をします。 ただし、法定の遺留分は遺言に優先します。
遺言執行者とは
遺言執行者とは文字通り遺言の内容に沿って諸手続きを執行していく者のことです。 遺言執行者は通常は遺言書に指定されますが、遺言書に指定が無かったり指定された者が拒否したりした場合、相続人の申し立てによって家庭裁判所が専任します。 遺贈、遺産分割方法の指定、寄付行為などは遺言書に沿って相続人自ら手続きすることもできますが、認知、推定相続人の廃除・取消などは遺言執行者しかできません。 遺言書にそのような内容が有れば遺言執行者を定めなければならないのです。 そして遺言執行者が指定された場合には相続人は一切の遺言執行行為を禁止されます。 遺言執行者は未成年と破産者以外であれば誰でもなれますが、一般的には弁護士、司法書士、行政書士、税理士などの個人または法人を指定します。
近年は、信託銀行を執行者に指定する遺言信託も多くなってきました。 遺言信託の場合には、信託銀行が遺言者との契約をもとに遺言書作成、保管、遺言執行一切を行います。 遺言者の意志を確認しながら作成した遺言書をて公正証書にし、正本を信託銀行で保管します。 保管中には、定期的に資産や相続人の内容を見直します。 費用は、契約時に取扱手数料20~30万円、保管料が年間6千円程度、内容変更手数料5万円程度、遺言執行報酬最低料金100万円程度遺産総額の2%から0.3%程度です。 一般的に遺産額が多くなるほど報酬料率が下がるように設定されています。 この他に印紙、税務申告にかかる費用、証明書を取り寄せる費用などは実費になります。