2016年5月25日に成立した改正再生可能エネルギー特措法は、事業用の太陽光発電業者にとって、影響の大きい改正だ。この法律の主な趣旨は以下の通りである。
(1) 新認定制度の創設について
再生可能エネルギー発電事業者の事業計画について、その実施可能性や内容等を確認し、適切な事業実施が見込まれる場合に経済産業大臣が認定を行う。
(2)買取価格の決定方法の見直しについて
入札を実施して買取価格を決定することができる仕組みを導入。
開発期間に長期を要する電源などについては、あらかじめ、複数年にわたる調達価格を定めることを可能とする。
(3)買取義務者の見直し等について
買取義務者を小売電気事業者等から一般送配電事業者等に変更。
出典:経済産業省HP 「再エネ特措法等の一部を改正する法律案」より
太陽光発電投資家が注目すべきポイント
この中で(2)の入札に関し、経済産業省は2017年10月を目途に実施する方向で調整を進めており、太陽光関連事業者の収益環境は、今後ますます難しい状況に置かれるかもしれない。投資家は、法律改正、原発の廃炉工程の進捗、グローバルな地球温暖化に対応するCOP21の動き、原発の再稼働の動きなどにアンテナを張っておく必要があるだろう。
2015年茨城県常総市で起きた鬼怒川の越水場所に、メガソーラーが設置されていたことは記憶に新しいと思う。その後、経済産業省はその年の12月、産業構造審議会を開催し、今まで野放しだった太陽光発電設備の安全確保の施策について初めて議論した。今後は、従来にも増して設置業者に安全性向上や定期点検制度が導入される可能性がある。
ファイナンスに関しては、マイナス金利の影響で、金融機関の融資姿勢は積極的で、特に地方銀行とリース会社のアグレッシブな融資姿勢がさらに加速することが予想される。またこれまでは、メガソーラー設置場所で土地を造成する際の費用は自己資金で賄うケースが多かった。事業者にとってはかなりの負担感を伴うのが実態だが、リース会社によるメザニンローン(資本と融資の間のスタイル)が、こうした資金需要に応えつつある。
2015年12月のCOP21「パリ協定」において、日本は、「2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比26.0%減の水準にする」を事実上の国際公約とした。今後の原発の再稼働の状況次第では、再生可能エネルギーの比重が今まで以上に高くなることも予想される。
このように、将来の日本のエネルギー供給の見通しが難しい中で、太陽光関連事業者の経営環境もますます厳しくなってくるだろう。市場の急激な変化の中で、波に乗り切れない中小規模の太陽光関連事業者の淘汰は、しばらく続く可能性が高い。
マネーデザイン
代表取締役社長 中村伸一
学習院大学卒業後、KPMG、スタンダードチャータード銀行、日興シティグループ証券、メリルリンチ証券など外資系金融機関で勤務後、2014年独立し、FP会社を設立。不動産、生命保険、資産運用(IFA)を中心に個人、法人顧客に対し事業展開している。日本人の金融リテラシーの向上が日本経済の発展につながると信じ、マネーに関する情報を積極的に発信。
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