中国の一般紙に仮想通貨の記事が掲載された。中国人民銀行(中央銀行)は「法定数字貨幣(仮想通貨)」の研究開発工作を加速する。ただしいつまでに何をするといったタイムスケジュールは決まっていない。という一般の人には分かりにくいテーマだが、何か狙いがあるはずだ。

研究開発の決意

かつて話題を提供した仮想通貨・ビットコインのことを、一般の中国人はどのくらい覚えているだろうか。

しかしビットコインは仮想通貨の次の場景として、ブロックチェーンの開発を継続することが重要と知らしめた。そして実際に、多くの科学技術と金融研究開発のトップランナーたちを吸引し、その探索が開始されている。このように記事は始まっている。

また最近、中国人民銀行の公式サイトに、2017年度の人材招へい公告が載った。その中に、中央銀行直属の中国人民銀行印制科学研究所の招へいする、数字貨幣研究開発人員というポストがある。これは法定数字貨幣の発行を加速させようという中央銀行の市場向けサインである。

数字貨幣(仮想通貨)の定義

中央銀行は、数字貨幣の研究を加速させる。さてその数字貨幣とは何か。実は国際的な権威を持つ統一定義はない。先行してまず言葉上から実際生活に浸透しつつある。しかしやがて普通の人生におけるあらゆる場面に触覚を伸ばしてくるだろう。

OK Coin創業者兼CEOの徐明星氏は次のように解説する。この概念はかなり以前から出現していた。例えば我々には支付宝や微信の中に財布を持っている。銀行内の残高を数字貨幣の1種として使っている。テンセントのQQ幣もそうである。

マクロの話なら民間の全貯蓄資金を数字化したものであり、ミクロならスーパーなどでの商品購入資金だ。数字貨幣はすでに多くの人の生活の中で走り始めている。法定あるいは公的機関の発行する数字貨幣の可能性も今になって議論の始まったことではない。

法定数字貨幣は近年、各国中央銀行の重点研究領域だ。中国人民銀行も2016年1月、数字貨幣検討会を招集、専門的研究団を成立させる意思表示をした。それが間もなく現実化する。遠くない将来、中央銀行発行の数字貨幣がお目見えすることになるだろう。

先端技術から生活シーンへ

先端技術が普通人の視野に入るまでのの距離は遠い。未来の数字貨幣生活を想像し、人々のときめきを加速させる必要がある。もう一度、徐明星に聞いてみよう。彼が挙げたのは、「あなたが車を運転してA駐車場からB駐車場まで移動したとする。どちらの料金も1枚のカードで支払いができる。またあなたの家で冷蔵庫の牛乳がなくなったとしよう。すると数字貨幣が代わりに購入してくれる。代金は自動的にネット上で清算される」などである。

中国は人口多く面積も広い。紙幣の種類を替えるだけで10年の準備期間を必要とする。しかし法定数字貨幣はそうはならない。モデル地区を選び、漸進的にゆっくり推進していく。使用効果の観察、累積された経験、随時改善による補完の後、熟成された形で一気に全国に導入されるだろう。

問題は「中国人民銀行法」「物権法」「反洗銭(マネーロンダリング)法」「人民幣管理条例」などの改正である。漢詩風に言えば“任重而道遠”(任重く而して道遠し)である。と結んでいる。

ビットコインなど政府の管理に服しない仮想通貨は受け入れられない。ブームが下火今のうちに自分たちで作り、流通させ、国際的にも主導権を握ろう、という狙いだろう。それにむけての啓蒙が始まったのである。人民銀行が本気モード入りしたのは間違いない。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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