米雇用統計,イタリア国民投票,FOMC
(写真=Thinkstock/Getty Images)

トランプ次期政権の経済政策「トランプノミクス」への期待感から米株式市場は急上昇する場面も見られたが、心配性なウォール街のファンドマネージャーからは「あまり景気を過熱させるのも良くないのではないか?」との声も聞かれる。期待先行の株価上昇や将来的な景気の過熱に対しては、一部で警戒感が広がっているのも事実だ。

今回は、間もなく発表される11月の米雇用統計のポイントを整理したい。

家計調査の内容に注目、労働市場からの撤退が懸念材料

10月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前月比16万1000人増加した。米労働市場はほぼ完全雇用に達したと考えられており、巡航速度としては15万人程度の増加で申し分ない。

雇用の増加を月平均でみると2014年が25万1000人、2015年が22万9000人だったのに対し、今年1〜10月期は18万1000人で増勢は明らかに鈍化している。11月の事前予想は18万人であるが、この数字自体よりも増勢の鈍化に歯止めがかかるのか見極めることが重要だ。巡航速度で安定するのか、鈍化が続くのかは将来的な景気後退との距離感を図る判断材料となる。

10月の家計調査では失業率が4.9%と9月の5.0%から0.1%ポイント低下した。数字だけみると問題なさそうだが、内容はかなり危うい。

就業者数が4万3000人減少したほか、労働力人口も19万5000人減少している。失業者は15万2000人減少しているが、就業者数と労働力人口の減少を加味すると、職探しを諦めたことで失業者にはカウントされず、その影響で失業率が低下している可能性が高い。雇用情勢に改善の余地が乏しくなり、良くても現状維持でいつ軟調に転じてもおかしくない状況にあるのかも知れない。

10月の賃金の上昇率は前年同月比2.8%の上昇となり、2009年6月以来、約7年ぶりの高い伸びとなった。賃金の上昇は個人消費の押し上げ要因となることから好感できる一方で、人手不足が深刻化している可能性も排除できず、増勢が続くようだと景気が過熱してしまう恐れがある。

2500万人の雇用創出は現実的ではない

トランプ次期大統領は、減税と大規模な公共投資、規制緩和により今後10年間で2500万人の雇用を創出するとしている。しかし、現在米国には780万人しか失業者がいないので、移民や難民を大量に受け入れない限り、雇用できる人がいなくなる公算が大きく、「10年間で2500万人の雇用創出」は現実的とは言い難い。

最近は人口動態の変化や国境警備の強化などにより、メキシコからの入国者数は帰国者数を下回っている。したがって、移民を増やしたくても厳しく規制している限り簡単には増えない。次期政権は難民の受け入れにも慎重だ。

さらに、1100万人と推計されている不法移民の強制退去も公約しており、まずは不法移民のうち犯罪歴のある300万人を国外へ追放するとしている。不法とはいえ、必要とされている労働力の供給削減につながる可能性もある。

2009年に1540万人にまで膨れ上がった失業者数も現在はほぼ半減となり、その間に1350万人の雇用が創出された。失業率は10.0%から4.9%へと低下している。

トランプノミクスは雇用の拡大を背景に「4%成長」を目標に掲げているが、少なくとも米国内には高成長を達成し続けるための労働供給力が不足しており、持続可能な目標とは言い難い状況だ。