FinTechの飛躍を受け、2017年は中国本土、香港、シンガポールなどのITセクターの給与成長率が、アジア太平洋(APAC)地域における銀行セクターの給与成長率を追い越すと予想されている。

銀行よりもIT企業に魅力を感じる優秀な人材が増加傾向にある近年、銀行は給与面の向上は勿論、昇進のチャンスや効果的なリーダーシップを前面に押しだすことで、人材確保に努めることが必須となりそうだ。

クチザジ氏「銀行が一流の人材を楽に確保できる時代は終わった」

ロンドンに本拠を置く、国際プロフェッショナル・サービス会社、タワーズワトソンが、銀行・エネルギー・テクノロジー・製造・メディアなど、11産業の来年の給与成長率を予測するレポート「2016年版給与予算データ」を発表した。

来年のAPACの銀行セクターの給与の伸びは4.8%と、対象となった全11産業中、2番目に低い予想成長率。中国本土、香港、シンガポールの銀行セクターの成長率はそれぞれ6.3%、3.6%、3.0%。対するITセクターの伸びは7.5%、4%、4%と、0.4ポイントから1.2ポイント上回っている。

あくまで成長率を予測したものであるため、テクノロジー企業の給与額そのものが銀行を上回ることを保証するものではない。しかしタワーズワトソンの国際ファイナンシャル・サービス部門ディレクター、クレッグ・クチザジ氏は、「従来型の銀行にとって、一流の人材を楽に確保できる時代ではなくなった」と、銀行の競争力の低下を指摘。

堅苦しい銀行の中間、重役クラスの役職よりも、無限に広がるFinTechの可能性に魅力を感じる若者が増えているのは事実だ。「革命性と刺激にあふれた環境で、自分の能力を思う存分発揮できる」というIT企業のイメージに憧れをいだく若者は後を絶たない。

米キャリアサイト「ユニバーサム」が今年発表した「就職したい企業ランキング」でも、現役経営大学生間でIT企業の人気が銀行を上回った。

これらのIT企業の多くが、基本給に上乗せして実績に基づくボーナスを支給している事実を考慮すれば、レポートで予測されているような成長の失速は銀行にとって致命傷となりかねない。他分野への人材流出防止対策として、給与、リーダーショップ、労働環境、組織力など、様々な点で課題が山積みのようだ。(ZUU online 編集部)

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