原油価格,OPEC総会
(写真=Thinkstock/Getty Images)

石油輸出国機構(OPEC)は、11月30日のウィーンでの総会で8年ぶりの減産に合意した。事前予想では減産合意に至らずとの見方が強かっただけに、市場ではサプライズとしてとらえられ、30日の米原油先物は9.3%高の49.44ドルと急騰した。

翌12月1日には51.80ドルまで上げ、10月27日以来となる50ドル台を回復し、10月19日の年初来高値の51.93ドルにも迫った。今回の減産は本物なのだろうか。今後の動向を予測してみよう。

9月のアルジェでの減産合意は不協和音が漂っていた

OPEC総会を2ヶ月後に控えた9月28日のアルジェでのOPEC会合で、産油量を日量3250万~3300万バレルまで削減することで基本合意したと報道された。OPECは、「減産」ではなく「生産ターゲット」と説明したが、OPEC全体では8月時点で日量3324万バレルの産油量だったため、市場では実質減産合意ととらえた。減産基本合意を好感し、原油の指標であるNYMEXのWTI原油先物の価格は合意前の1バレル45ドル水準から上げ、10月19日には51.93ドルの年初来高値をつけた。

ただ、アルジェで合意されたのはあくまでもOPEC全体としての減産の方向性であり、具体的に加盟国が産油量をどのように修正するのかは、議論が先送りされていた。

10月23日、イラクのルアイビ石油相がイラクを減産割り当ての対象国から外すべきだと訴えた。増産継続を主張するイランとイラクに対して、産油シェアの乱れを嫌ったサウジアラビアがあくまでも増産対応を求めていたことが、合意形成の阻害となっており、OPECの足並みが乱れているとの見方につながった。OPEC総会では減産合意できないとの見方が支配的になり、原油価格は10月25日に再び50ドルを割り込んだままでOPEC総会を迎えることになる。

一転OPEC総会で減産合意

11月30日、ウィーンでのOPEC総会で、大方の見方を裏切り、減産で最終合意した。OPEC全体で日量3250万バレルへの削減となる。加盟14ヵ国の10月の生産量の日量3364万バレルを基準にすると減産幅は日量約120万バレルになる。

イランがほぼ現状と同じ日量380万バレルに産油量を凍結することで合意したことで、サウジアラビアも態度を軟化させ、2008年以来となる8年ぶりの協調減産が実行に移された。

サウジアラビアが日量49万バレルと最も大きな減産割当を負担するが、イラクが21万バレル、UAEが14万バレル、クウェートが13万バレルなど、イランとリビア、ナイジェリアの三か国を除いて協調減産が実施されることになる。

OPECは、ロシアなどOPEC非加盟国に対しても60万バレルの減産を期待するとしており、とくにロシアは40万バレルの減産となる。OPECと非OPECを合わせ最大で日量180万バレルの原油供給が市場から削減されることになる。当面の実施期間は来年1月1日からの6カ月とされているが、更に6カ月の期間延長を検討することも合意内容には含まれている。

減産合意が出来なければ30ドルに向けて下落するという見方もあっただけに、減産合意の期待感は高まった。

実行リスク、非OPEC減産、米シェールなどの難問

OPECがこれまでシェア重視だった従来戦略を転換し、原油市場の需給改善ペースを速めて相場の回復を優先する供給管理方針を打ち出したことは高く評価できる。来年1~3月期中に需給均衡状態を実現するのは困難だろうが、4~6月期に国際原油需給が均衡化する可能性は十分にある。2017年通期のOPEC産原油の推定需要は3269万バレルであり、仮に年後半までOPEC加盟国・非加盟国の生産調整が継続できれば、過剰在庫の取り崩しが十分に可能だろう。

ただ、OPECにおいては合意を実際に実行できるかといった実行リスクが常にともなう。また、非加盟国の参加が期待されているが、これまでの経緯からみて期待通りに動くとは言いがたい。また、50ドル超えが定着するようだと価格が安いときに生産調整をしていた、米シェールオイル業界が増産に向かう可能性もある。

サウジ減産合意の背景?

そもそもが、サウジアラビアが従来戦略を転換したのは、国営石油会社のアラムコ社が2017年に上場するための市場環境整備という見方もある。サウジはアラムコ株の5%未満を2017年にも売り出す方針。同社の価値を2兆ドル(約220兆円)超と見込んでおり、5%でも1000億ドルと世界最大規模のIPOになり、上場後の時価総額は世界一のアップルを大きく上回る。

IPOがうまくいくためには、アラムコの企業業績が安定していることは必須。そのためには原油価格の上昇ならびに安定が大切なことは明らかだ。

また、トランプ大統領の人事が、OPECの結束を固めたという見方も生じている。トランプ大統領は、CIA(中央情報局)長官にマイク・ポンペオ氏、国家安全保障補佐官にマイケル・フリン氏を抜擢した。

CIA長官に選ばれたポンペオ氏は、対イランのタカ派で知られる人物。国家安全保障補佐官のフリン氏はイスラムに対してタカ派で知られる人物。今後、中東やOPECに強い圧力がかかるのは必死だと見られている。OPEC諸国にしてみれば、内部争いをしている場合ではなく団結しなければという危機感が生じ、減産合意につながったというのだ。当面、OPECの憂鬱は続きそうだ。

平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

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