「年金を払う意味」で見落としがちなこと
では、若者にとって「年金を払う意味」は本当にあるのでしょうか? 注意しなければならないのは、「年金を払う意味」について考えるとき「将来受け取る年金額」ばかりを重視しがちなことです。
もちろん、「将来受け取る年金額」は重要です。しかし、年金の機能はそれだけではありません。年金には「優れた保険の機能」があります。
具体的には、障害者年金や遺族年金です。もし、鬱状態になって働けなくなったとき、ガンにかかって治療で障害が残った場合……生活に困ってしまいますよね。そのような不測の事態に、障害者年金が役に立ちます。
また、子どもがまだ小さくてこれから教育費、生活費がかかるときなどに、突然死亡した場合……家族は生活に困りますね。年金制度には、そんな「もしものとき」のための遺族年金があります。厚生年金では一生涯、基礎年金でも子どもが18歳に達するまで支給されます。
私は、障害者年金や遺族年金のような「手厚い保障」があるだけでも、年金を払う意味がある、と考えます。ただし、これらの保障を受けるには「年金が未納になっていない」ことが条件となります。
公的年金を支払ったうえでの「自助努力」を
ところで、巷では「公的年金制度の崩壊」を懸念する声を耳にすることもあります。読者の中にもそう考えている人がいるかも知れません。
あくまで個人的な意見ですが、私は公的年金制度自体は崩壊しないと考えます。それより懸念されるのは「公的年金だけで暮らしている人の生活が『崩壊』する」ことです。
これからの時代、公的年金だけで老後の生活を維持するのは難しいと言わざるを得ません。つまり、「自助努力」が求められます。「個人型確定拠出年金」が注目を集めているのは、そうした時代の変化を象徴しているのではないでしょうか。掛金の全額が控除となる「個人型確定拠出年金」は老後資金の備えに最適といえるでしょう。
ただ、公的年金を未納している人は「個人型確定拠出年金」にも入ることができません。まずは、公的年金をきちん支払ったうえでの「自助努力」が大切なのです。
長尾義弘(ながお・よしひろ)
NEO企画代表。ファイナンシャル・プランナー、AFP。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『怖い保険と年金の話』(青春出版社)『商品名で明かす今いちばん得する保険選び』『お金に困らなくなる黄金の法則』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)、『保険はこの5つから選びなさい』(河出書房新社発行)。監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。