米国利上げ、日本の利上げはいつ?

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(写真=ZUU online編集部)

――米国が利上げに踏み切りましたが、日本はどうでしょうか。

アメリカは25ベーシスポイント引き上げた今、今後は「17年に何回上げるか」が焦点になっています。当初、2回という見方が多かったのですが、今は3回説が主流です。

日本がこのマイナス金利、量的質的緩和を続けていると、トランプ政権が円安攻撃しなければ、ドル円は120円を超えることになります。これは一部の輸出産業にとっては良い面もありますが、既に多くの輸出企業はかつての円高の時に外に行ってしまっていて、日本としてはむしろ輸入でのマイナスの方が痛い。

日本の金利も、17年中はないでしょうが、18年には考えなければいけないでしょう。金融政策だけではなく、財政政策もやらないと物価はいつまで経っても上がらないことがアメリカでも立証されつつありますし、日本でもそういう議論になってきています。

今カジノ法案、IR(統合型リゾート)法案が成立に向けて動いていますが、これはタイミングとして良い時で、当然やるべきだと思います。日本の「オリンピック後」を非常に心配する向きがありますが、これこそポストオリンピックの経済を支える要素になるでしょう。

技術面ではブロックチェーンとAIに注目

――SBIグループはフィンテックにも注力されていますが、今後の見通しや注力する分野についてお聞かせください。

大きな技術革新の波が世界的に起きていますが、50~60年周期で起きている「コンドラチェフの波」というのがあります。私の観測では大体2010年あたりから、様々な新しいテクノロジーが出てきていますが、非常に大事なテクノロジーの1つにブロックチェーンがあります。

AI、ビックデータ、ロボティクス、IoT、ブロックチェーンといった技術は大企業ではなく、ベンチャー企業から生まれています。こうした要素技術は様々組み合わされ、初めて広く使用されるようになります。いわゆるイノベーションのジレンマです。そこでSBIではベンチャーの要素技術をいち早くグループの生態系に取り込んでいます。我々は「FinTech1.0」の時代からやっていたので、「FinTech2.0」に移行するのも早く出来ます。どこよりも早く、圧倒的な低コストで移行することで、圧倒的な競争力を持てます。

先ほど保護主義的な動きの高まりについて指摘しましたが、これと反してグローバルスタンダードをつくっていくことが大事だと思います。日本はガラケーで「グローバルスタンダードを取れずガラパゴスになる」という経験をしました。ドコモの携帯やiモードは性能が良く、どこよりも先にやったが、世界ではアップルやサムスンにやられてしまいました。だから私は、今アジアの国々にもフィンテック分野でのローカルパートナーとの連携を行っていますし、リップルやR3とも組んでいます。日本だけでなく、グローバルで革命を起こしていかなければならないのです。

もう1つ重要なテクノロジーはAIです。

AIが急速に発達して人間の仕事が奪われつつあるという指摘もありますが、そういう声は昔からありました。19世紀に動力が機械になって英国でラッダイト運動が起き機械が壊されたり、その後も産業用ロボがヒトがやっていたことを代わりにやるようになったりしています。

これまで金融業界でヒトが「勘」でやっていたことを、AIのテクノロジーやビッグデータを使ってやるようになっていくはずです。

来年は大きく既存の秩序を変える大転換点の年になると思います。そのため、来年・再来年にかけて、この技術革新の波を取り込んでいくところが大きく伸びる可能性があります。

――最後にSBIグループの今後の見通しをお聞かせください。

私は東洋史観の軍略を研究しています。東洋史観とは「東洋的な自然観を基に体系づけられた知恵の集積」のことで、その軍略とは「人間集団の大計を誤りなく次の時代へ誘導するために考え出された知恵」のことです。

50年をひとつのサイクルとして、トレンドを10年ごとに5つの時代に分けてとらえるのですが、人には5つの本能(攻撃、習得、守備、伝達、引力)があるため、組織もその本能が影響したものになります。

東洋史観の時代論からSBIホールディングスを振り返ると、1999年の創業から2008年までの10年の間が“攻撃”の「動乱期」。ライブドア・ショックやリーマン・ショックはありましたが、グループとしてはインターネット金融コングロマリット体制が整えられました。そして09年から18年までが“習得”の「教育期」。規模の拡大から収益力重視に舵を切り、金融サービスでも選択と集中を進めてきて、15年3月期には過去最高の営業収益、営業利益を達成しました。

19年から10年ごとに“守備”の「経済確立期」、“伝達”の「庶民台頭期」、“引力”の「権力期」と推移すると見ています。当社は19年には完全に「陽」に転じ、29年まで非常に良い年回りの10年間となります。

この見方は、パナソニックなど他の企業についても、日本や中国などの国家についても当たっており、これからも深く研究しながら経営に役立てていきたいと思います。

北尾吉孝(きたお・よしたか)
1951年生まれ。74年慶應義塾大学経済学部卒業後、野村證券入社。78年英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。野村證券NY拠点勤務後、英国ワッサースタインペレラ社常務取締役、野村企業情報取締役、野村證券事業法人三部長を経て、95年ソフトバンク入社、常務取締役就任。現在SBIホールディングス株式会社代表取締役執行役員社長。『日に新たに』(経済界)、『修身のすすめ』(致知出版社)など著書多数。