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業績好調のKDDIが2014年、満を持して電子マネー業界に参入しました。電子マネーといえば、nanaco(ナナコ)やsuica(スイカ)などが市場を先行している、いわばレッドオーシャン。その中にあえて飛び込んだauの戦略とは一体何なのでしょうか。


auウォレットとは

auの電子マネー「auウォレット」は、これまでの電子マネーとは違った新しいタイプの電子マネーだと言われています。その理由は、プリペイド方式でポイントが貯まる電子マネーの機能に、クレジットカードのような使いやすさが加わったという点にあります。

nanacoやsuicaといったこれまでの電子マネーは、プリペイド方式で何度も使用できること、そして使った分だけポイントが貯まり、そのポイントで買物をすることができるということが大きな魅力となり、その利用者を伸ばしてきました。ただ電子マネー端末が置いてある店舗でしか利用できないというのが、これまでの電子マネーの大きなデメリットでもありました。こうした使い勝手の悪さを考え、利用を見送ってきたユーザーは恐らく少なくないでしょう。

そんな問題を解決したのがauウォレットです。auウォレットの特徴は、MasterCard (R) 加盟店なら、電子マネー端末がなくてもまるでクレジットカードのように利用することができます。もちろんauIDを持っていれば、クレジットカードを利用していなくても申し込みが可能です。カードへの入金はこれまでの電子マネーと同じくプリペイド方式ですが、じぶん銀行やauかんたん決済でもチャージができるので、携帯電話を持っていればどこでもチャージすることができます。利用ごとに「WALLET ポイント」というポイントが貯まり、このポイントで買い物ができたり、au携帯電話で機種変更を行う際の割引などに使うこともできます。この利便性が多くのユーザーに受け入れられ、申し込み開始からわずか23日間で、100万件もの申込数を記録。今後の電子マネー業界をけん引することが期待されています


auウォレット戦略に見るKDDIの戦略とは?

2014年2月に行われたauウォレット発表会見で、『2016年度までに流通規模1兆円程度の市場をつくり出す』ことを発表したKDDI。これまで電子マネー市場をけん引してきたwaonの2013年度決済金額1兆6000億円に迫るもので、auウォレットにかけるKDDIの鼻息の荒さが読み取れる内容だと言えます。

auウォレットはKDDIにとって020を進める足がかりとなるプロジェクトであり、今後のKDDIを支える収益の柱の一つになることを期待しているように思えます。LINEなど通話アプリの影響や、同年8月から開始される音声通話定額の影響により、音声通話の月額平均収入は減収傾向にあります。今後微増を続けると見られる携帯電話市場ですが、移り変わりの激しい時流にあることから、現状のプロジェクトだけでは今後の成長は難しいと考えられます。他方020の市場はまだまだ多くの企業が参入したばかりという、成長途中の市場です。株式会社野村総合研究所が2012年に発表した「2017年度までのIT主要市場の規模とトレンドを展望」によりますと、020市場は2017年までに約51兆円に達すると言われています。2014年現在、まだ020を席巻するサービスがないからこそ、KDDIはここに成長戦略の鍵があると判断したと考えるのは難しくありません。