いよいよ2017年がスタートした。今年は年初から世界的に株価が上昇しており、ウォール街の市場関係者からは「トランプ・ユーフォリア」との声も聞かれる。昨年と違い、わくわく感を抱かせるスタートとなったわけであるが、一方でその持続性を疑問視する声も根強い。実体経済への波及が見られないなかで、マーケットの期待が先行しているのも否定できない事実だ。
そうしたなか、12月の米雇用統計が本日発表される。事前予想は雇用者数の増加が17万8000人と前月から横ばい、失業率は4.7%と前月比0.1%ポイント上昇となっているが、ここで注目すべきポイントを整理してみよう。
内容は「冴えなかった」11月の米雇用統計
まず、11月の米雇用統計を振り返ってみると、雇用者数の増加は17万8000人と事前予想とほぼ一致したが、失業率に不安を残す結果となった。
11月の失業率は4.6%と前月(10月4.9%)から0.3%ポイント低下しており、一見すると良い数字に見える。しかし、失業率は「失業者が労働市場から撤退しても低下する」ことを見過ごしてはならない。11月は非労働力人口が増加し、労働参加率が低下しているので、失業者が職探しを諦めて労働市場から撤退した可能性が高い。
したがって、失業率の低下を素直には喜べない。労働参加率の低下は2カ月連続となり、年初に比べると就業率も弱含みだ。雇用の拡大余地が乏しく、労働市場はピークアウトしている恐れがある。
雇用の拡大ペース鈍化を引き続き注視
労働市場のピークアウトを端的に示唆しているのが「雇用者数の拡大ペース」である。雇用者数の増加を月平均でみると、2014年は25万1000人、2015年は22万9000人だったが、2016年の1〜11月期は18万人となっている。雇用の拡大ペースは時間とともに着実に鈍化しており、これまでのところ下げ止まる兆しがない。
雇用の拡大ペースが鈍化している中では、成長が加速するとのシナリオは描きづらい。2016年のGDP成長率は1.6%程度となる見通しで、2017年に2.0%以上へと成長を加速させるためには、少なくとも雇用の拡大ペースが下げ止まらないと厳しいだろう。
11月は賃金が低下、個人消費への影響を懸念
11月は時間当たり賃金が前月比0.1%低下と約1年ぶりにマイナスとなった点も気がかりだ。過去2カ月が堅調だったことから、11月はその反動と見ることもできるので、「12月の数字」がトレンドを測る上でより重要となってくる。
過去2年をみると、賃金は11月に高い伸びとなった後、12月にマイナスとなる傾向にあった。今回も12月に低下した場合には3年連続でのマイナスとなるが、過去2年と異なり「11月がマイナス」となったことから、パターンが入れ替わり、12月に大きく上昇するのかも知れない。
とはいえ、12月の結果が「冴えない数字」となった場合には、先行きに対する警戒感を強める必要がありそうだ。その場合、特に個人消費への影響が懸念される。