労働市場の鈍化は早くも個人消費に影響か?

雇用の拡大ペース鈍化や賃金の低下は11月の個人消費にも現れているように見受けられる。

11月の個人消費は前月比0.2%増加と事前予想の0.3%増加を下回り、10月の0.4%増加から減速している。賃金の低下で可処分所得が前月比マイナスとなったことが影響した。一方、11月は貯蓄率が5.5%と10月の5.7%から低下しており、所得の減少を貯蓄の削減で補って消費を維持した姿がうかがえる。こうした対処は一時的には可能であっても、長期的に維持することは困難だ。

国全体の所得は雇用者数と賃金におおむね連動しており、所得が伸びないことには消費の伸びも期待できない。したがって、現在のように雇用の拡大ペースが鈍化し、賃金の伸びも低調な場合、今後の個人消費も低調となる恐れがある。

期待と現実の「かい離」が拡大中

ところで、11月は個人消費が減速した一方で12月の消費者信頼感指数は15年ぶりの高水準となっており、「期待値」は高い。

これは、物価にも言えることで、市場で推計されている期待インフレ率は12月30日現在で2.0%を上回っている。一方、FRBが参考としている11月の個人消費支出(PCE)価格指数は前月比横ばい、前年同月比で1.4%上昇と伸び悩んでいる。変動の激しい食品とエネルギーを除くコアPCEでは前年同月比1.6%上昇と10月の1.8%から伸び率が低下している。

このように、個人消費やインフレ率では期待と現実のかい離が大きくなっている。

米成長率、2%超えの継続は困難か?

7〜9月期の米GDP成長率は前期比年率3.5%上昇と4四半期ぶりに2.0%を上回ったが、これはFRB(米連邦準備理事会)の利上げ見送りによる金利の低下とドル安の恩恵を受けたものと考えられる。

しかし、金利とドルは再び上昇しており、2.0%を超える成長維持は困難になっているようにも感じられる。ニューヨーク連銀が公表しているナウキャストによると、12月30日現在、10〜12月期の成長率は1.8%、1〜3月期は1.7%と2.0%以下の成長が予想されている。

FRBが推定している潜在成長率は1.8%であり、当面は2.0%成長を維持できるかが好調・不調を分ける分岐点として意識されることになるだろう。

成長率の見通しでは、シカゴ連銀の全米活動指数が11月まで4カ月連続でマイナスとなっているのも気がかりだ。同指数がマイナスということは米成長率が過去の平均を下回っている可能性があり、2.0%以上の成長を維持することが難しいことを示唆している。

事前予想通りなら「低圧経済」への逆戻りも?

冒頭で述べた通り、12月の雇用統計の事前予想は雇用者数の増加が17万8000人と前月から横ばい、失業率は4.7%と前月比0.1%ポイント上昇となっている。

潜在成長率を下回る成長、すなわち低成長・低インフレという「低圧経済」に逆戻りするのか、それとも成長を加速するのか、今回の雇用統計ではこの辺りの確認もポイントとなる。事前予想通りの数字では労働市場の減速を追認することになりそうで、「低圧経済への逆戻り」が懸念されるかも知れない。

もちろん、実体経済が期待に沿う形で上振れる可能性もないとはいえない。雇用関連で言えば労働市場情勢指数が小幅ながらもプラスを維持していることは明るい材料だ。雇用者数、賃金、労働参加率、労働時間などの数字が上向くのであれば、景気は期待されている方向へと歩を進めることになるだろう。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)

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