地元の議員、首長らからフル規格化望む声続々と
耐久走行試験の先送りはフリーゲージトレイン導入時期の遅れにつながりかねない。リレー方式という苦肉の策を採用したのも開発の遅れが原因だけに、地元からはいら立ちの声も聞こえる。長崎県の中村法道知事は「結果は非常に残念。これ以上大きな遅れが生じないよう国に要請する」とのコメントを発表した。
長崎ルートはリレー方式だと、博多−長崎間の所要時間が最速1時間26分。現行の1時間48分よりわずか22分の短縮でしかない。しかも、武雄温泉駅で乗り換えを伴う。メリットに乏しく、余計な手間もかかるとして長崎県や佐賀県内では不満の声が出ていた。
フリーゲージトレインが運行すれば、さらに6分時間短縮されるものの、山陽新幹線を運行するJR西日本はフリーゲージトレインの乗り入れに難色を示している。地元は博多駅で乗り換えになる可能性が高いことにも納得していない。
長崎県議でつくる長崎ルート建設促進議員連盟では「いつ実用化されるか分からないフリーゲージトレインは非現実的」との声が出ており、佐賀県議会の推進議連メンバーと連携し、フル規格を見据えた対応を求める動きも見える。沿線首長の間でも会合などでフル規格化を求める声が上がるようになってきた。
JR九州や佐賀県も方針転換を視野に
JR九州の青柳社長は12月末の記者会見でフリーゲージトレインの開発が遅れている現状を踏まえ、「(さらに)開発が遅れるなら、それに代わるものの検討をお願いしたい」と、状況によってはフル規格での整備を求める考えを示唆した。
リレー方式での開業が長引くことについても「適切でない」と言明。国に対しては「一定の方向を夏に示してほしい」とフリーゲージトレインかフル規格化を選択するタイミングが夏になるとの見通しも明らかにした。
会見内容についてJR九州広報部は「記者とのやり取りの中で出た発言で、(国、長崎、佐賀の両県などと合意した)リレー方式で開業を目指すとした前提は変わらない」としているが、これ以上の開発の遅れを容認できないとする声もJR九州内で高まっている。
長崎ルートの整備方針を議論する与党検討委員会は12月末の会議で半年後の技術的評価で現行計画見直しの必要性を判断することを確認した。しかし、長崎県選出議員からは「もう待てない」とフル規格化にすぐ動くよう求める声が出たという。
長崎県新幹線・総合交通対策課、佐賀県新幹線・地域交通課はともに「当面、国の対応を見守る」としている。このうち、佐賀県はこれまで地元にメリットが少ないとしてフル規格に慎重な姿勢を示してきたが、地元負担が増えなければフル規格化を容認することも視野に入れ始めたもようだ。
高田泰 政治ジャーナリスト
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関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。
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