何が変わるのか

現在、携帯電話大手はSIMロックを掛けているため、利用者が携帯電話会社を変えたくなっても、端末を買い換える負担が生じてしまいます。その買い換え負担が大きいため、利用者は乗り換えを我慢せざるを得ず、業者側にとっては通信料金での競争圧力が少なくなり、多額なキャッシュバック競争を引き起こしている原因になっていると考えられます。

ところがSIMロックが解除されると、利用者は現在使用している端末のまま携帯電話会社を変更できるようになりますので、通信料金の競争が促されることになり、料金の引き下げが行われる可能性が出てきます。また、海外旅行をした際も、旅行先のSIMカードを利用することができる様になりますので、現在使用している端末の利便性が向上します。

それではSIMロック解除は、利用者にとっては良い事ずくめなのでしょうか。実はデメリットも発生する可能性があります。現在は利用者が一定期間乗り換えできないという前提があるため、端末代金の割賦払いを月々割などで事実上値引きしています。つまり利用者の囲い込みにより、端末の販売価格を値下げしているわけです。しかし利用者が自由に他社に乗り換えられることになれば、携帯電話会社は、端末毎に確実に利益を得なければならなくなります。


期待する業界

SIMロック解除の義務化は、大手携帯電話会社にとっては、利用者の囲い込みが難しくなり、通信料金競争圧力が加わるなど、厳しい状況に立たされることになりますが、一方でSIMロック解除を歓迎している業者もあります。それはMVNO(仮想移動体通信事業者)という、通信設備を大手から借りてサービスを提供している業者です。SIMロック解除により、利用者がより安いMVNOを利用しやすくなるからです。例えばスマートフォンの通信サービスを低料金で提供しているビッグローブの古関義幸社長は、SIMロック解除について「追い風だと思う」と語っており、自社の利用者が増えることを期待しています。実際、この期待感を株式市場も感じ取り、7月1日にはフリービットやワイヤレスゲートなどのMVNO関連銘柄が活況を呈しています。


変化迫られるキャリアのビジネスモデル

既に述べました通り、現在では携帯電話会社、所謂キャリアが、自社が販売した携帯電話では他社の回線を使用できないようにSIMロックを掛けています。例えば同じiPhoneの機種でも、ソフトバンクで購入したものとドコモで購入したものでは、SIMカードを交換しても利用できません。つまりキャリアは同じiPhoneの購入者であっても、自社の顧客として囲い込みできるようになっており、このことが料金を割高にしている原因だと言われてきました。

総務省が発表したSIMロック解除の義務化ルールが実施されれば、利用者の利便性が高まると同時に、通信費やサービス内容の競争が激化する可能性がでてきます。このことは反面、これまで他社で囲い込まれていた利用者を自社に乗り換えさせやすい環境が生じることだとも考えることもできます。以上のことから携帯電話各社は、これまでのビジネスモデルを見直す必要が出てきたと言えます

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