高額美術品
(写真=PIXTA)

日本の美術品の国内での価格下落が目立っている。美術品は株式相場と相関関係が高いというが、株が16年11月からトランプトレードで大きく戻したのに対し、美術品は今のところ戻す気配がない。美術品投資のタイミングについて考えてみよう。

日本の美術品の価格指数は株価と高相関

高級絵画や陶磁器などの公開オークションで国内最大手のシンワアート <2437> では、日本の美術品の価格指数として「近代美術オークションインデックス」を算出している。日本人作品の日本画や油絵を対象に直近3回のオークションの平均価格をベースに算定しており、1990年9月を10000とした指数だ。

美術品指数のトレンドは株価のトレンドとほぼ一致する。美術品は富裕層の購入がメインで、株価の上昇で購入余力が高まるからだろう。一時期のゴルフ会員権も同じような傾向があった。

シンワアートは1989年創業で、指数算出開始が1990年9月だ。90年は、89年12月に日経平均が史上最高値の3万8957円をつけた翌年でバブルの真っ只中。美術品も高騰していたため、指数スタート時の10000が過去最高値となっている。バブル崩壊で93年には1000を割り込みあっと言う間にピークの10分の1以下になった。バブル崩壊後はしばらく1000を下回る状況が続いていたが、日本の株価が戻し始め日経平均が1万5000円を回復した05年6月にはバブル崩壊後の戻り高値で1249をつけた。05~07年はREITによるミニ不動産バブルもあり、美術品指数は上げ、美術品取引の取引数量も活況だった。

08年のリーマンショックの影響は美術品市場にも大きな影響を与えた。指数は再び下げトレンドに転じ、日経平均が1万円を割っていた12年2月には318と過去最安値を付けた。ピーク時からは約30分の1だ。再び指数が上がり始めるのは、アベノミクスで株価が上げ始めた13年以降になる。15年には500台を回復し、7月には574を付けたが、株価の下落で再び弱含んだ。

美術品はトランプ以降の株価の急騰にキャッチアップするのか?

2016年11月の米大統領選で大方の予想に反してトランプ氏が勝利すると、金利が急騰し、株も急騰、いわゆるトランプトレードと言われ世界の株式市場はリスクオンの状況となり、米国株は連日の史上最高値を更新、日経平均もトランプ後の安値から20%以上の急騰を演じた。一方、美術品の指数は7月の574から11月には343まで下げており、株式市場の動きとは逆に40%も下げた。株式市場との相関性の高いはずの美術品市場が全く戻らない。

美術品市場が戻らないのは、構造的問題を抱えているという可能性が強くなっている。美術品の愛好者は富裕層だが高齢化が進んでいる。美術品をコレクションしていた中心層が死亡したり、引退する時期を迎えているのだ。死亡、引退でたくさんのコレクションが市場に放出されるために、公開オークションへの出品は増えるが、一方で買い手としてのコレクター数は減っているため、需給が完全に崩れているというのだ。

コレクターの高齢化以外の構造的問題もある。もともと絵画は、インフレヘッジの代替金融商品として富裕層に人気があったが、長く続くデフレ圧力でインフレヘッジという金融商品自体のニーズが減っているのだ。

日本の住宅の変化も日本画の需要減少につながっている。日本画が合うような和室や床の間が有る日本家屋が減っていることも構造的に需給悪化の要因の一つだ。

こういった根本的な日本の美術品市場の構造問題を考えると、需給も悪く、保存も難しい高額美術品への投資は、いくら出遅れているといっても、良い投資とは言えなさそうだ。

国内需要の低迷を埋めているのが中国の富裕層のマネーだ。ネットオークションの比較サイトを運営するオークファン <3674> での美術品のネットオークションで落札価格は14年から上昇傾向にあるという。日本の公開オークションのトレンドとは乖離しはじめている。中国には買い手がいるからだ。高額美術品は中国に流れてしまっており、少なくとも日本では大きな市場にはなっていない。

平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

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