SG証券・会田氏の分析
(写真=PIXTA)

シンカー:マーケットは、2月10日の日米首脳会談で、トランプ大統領が為替のドル高・円安を問題視し、為替の調整が米国の貿易赤字縮小の手段とされることを警戒しているようだ。いまさら為替の適正な水準や貿易赤字のマクロ経済としての正しい理解を会談で主張しても、ビジネス的ではない観念論として、水掛け論に終わるだけではなく、円安への批判が出てしまうリスクを高めてしまうだけだろう。そうならないためにできることは、日本の内需拡大への強いコミットメントを示し、内需拡大により米国の製品・サービスの輸入が増加することをアピールすることだろう。問題は、トランプ大統領はビジネス的な考えが強く、何のコストもかけないコミットメントではリターンも出ないと考える可能性があることだ。安倍首相は、内需拡大に対して、大きな政治資本を費やすコミットメントをしなければならないだろう。一つの可能性は、トランプ大統領の再任のための選挙となる2020年まで、財政を拡大し続け、内需の拡大を促進し、デフレ完全脱却へコミットメントすることである。そのために、内需拡大の方向性とは逆行する2020年度の基礎的財政収支黒字化という財政緊縮の目標を取り下げる必要に迫られ、大きな政治資本を費やすことになるかもしれない。2020年度の基礎的財政収支の黒字化は、国際公約としても、デフレ完全脱却による財政再建を目指すマクロアプローチとしても、ほとんど意義は失われている。意義が失われ実際のコストは小さいが、見掛け上は大きな政治資本を費やすような大決断をしたかのように見えるため、トランプ大統領との「取引」の手段としてはとても有効であると考えられる。

2月10日に安倍首相がトランプ米大統領と会談する。

トランプ大統領は、貿易赤字を大きな問題とし、ビジネス的に国際経済関係をとらえているようだ。

マーケットは、トランプ大統領が為替のドル高・円安を問題視し、為替の調整が米国の貿易赤字縮小の手段とされることを警戒しているようだ。

いまさら為替の適正な水準や貿易赤字のマクロ経済としての正しい理解を会談で主張しても、ビジネス的ではない観念論として、水掛け論に終わるだけではなく、円安への批判が出てしまうリスクを高めてしまうだけだろう。

そうならないためにできることは、日本の内需拡大への強いコミットメントを示し、内需拡大により米国の製品・サービスの輸入が増加することをアピールすることだろう。

会談では、為替から内需拡大へ、トランプ大統領の注目をできる限り移そうとする努力が必要であろう。

安倍首相は、デフレ完全脱却へ強くコミットメントしており、内需拡大は重要な課題となっている。

デフレ完全脱却と米国の貿易赤字の縮小を同時に達成できるWIN・WINの形にもっていくことも十分可能であろう。

問題は、トランプ大統領はビジネス的な考えが強く、何のコストもかけないコミットメントではリターンも出ないと考える可能性があることだ。

安倍首相は、内需拡大に対して、大きな政治資本を費やすコミットメントをしなければならないだろう。

一つの可能性は、トランプ大統領の再任のための選挙となる2020年まで、財政を拡大し続け、内需の拡大を促進し、デフレ完全脱却へコミットメントすることである。

そのために、内需拡大の方向性とは逆行する2020年度の基礎的財政収支黒字化という財政緊縮の目標を取り下げる必要に迫られ、大きな政治資本を費やすことになるかもしれない。

それでもトランプ大統領との「取引」がうまくいかなければ、2019年10月の消費税率引き上げを凍結することも遡上にのぼるかもしれない。

もともと米国の財務省は日本の消費税率引き上げの方針に疑問を投げかけており、内需拡大の継続を求めてきた経緯もある。

2020年度の基礎的財政収支を目指すシナリオは、財政再建と金融緩和を政策の軸として合意した2010年のG20前後に作成され、事実上の国際公約としたものである。

2016年のG20やG7では、財政政策を緩和することで合意しており、財政再建が主眼であったこれまでの方針は既に転換している。

安倍首相は、1月24日の参院代表質問で、「債務残高のGDP比を中長期的に着実に引き下げていく」とし、会計的なアプローチである基礎的財政収支の単純な黒字化よりも、よりマクロ経済的なアプローチである債務残高のGDP比率の改善を重視する姿勢を示し始めている。

2020年度の基礎的財政収支の黒字化は、国際公約としても、デフレ完全脱却による財政再建を目指すマクロアプローチとしても、ほとんど意義は失われている。

意義が失われ実際のコストは小さいが、見掛け上は大きな政治資本を費やすような大決断をしたかのように見えるため、トランプ大統領との「取引」の手段としてはとても有効であると考えられる。

過度に目先の財政問題を懸念し、2020年度の基礎的財政収支の黒字化に固執し、内需拡大へのコミットメントへの信頼感が損なわれれば、為替での貿易不均衡の修正という日本にとって最悪の結果となってしまうリスクとなる。

そうなれば、デフレ完全脱却は成功せず、円高と財政緊縮による経済パフォーマンスの悪化が、内需の縮小と財政状況の更なる悪化につながるというこれまでの悪循環が続いてしまうことになる。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
会田卓司

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