コイケヤ,ガリガリ君,売り切れ,サントリー
(画像=湖池屋Webサイトより)

湖池屋は2月14日、わずか数日前、2月6日に発売したばかりの「KOIKEYA PRIDE POTATO魅惑の炙り和牛」を販売休止にすると発表した。理由は当初の販売計画を上回り、十分に供給量を確保できないからだという。今回は湖池屋の新商品が販売休止になったが、過去に目を向ければそのような商品は珍しくない。

今や新商品の「販売休止」は日常茶飯事に

たとえば赤城乳業が販売した氷菓「ガリガリ君リッチ コーンポタージュ」がある。こちらは2012年9月4日に販売開始されたが、3日後の9月6日には生産が追い付かず販売休止になった。

2015年2月24日にはハーゲンダッツジャパンから「きなこ黒みつ」と「みたらし胡桃」が販売開始されたが、その2日後には販売休止になっている。こちらも予想を上回り、供給困難になったからだった。

販売休止になるのはこうしたデザート類だけではない。日清では2014年4月に販売し始めた「カップヌードル トムヤムクン」が、2016年9月に販売しだした「カップヌードルビッグ "謎肉祭" 肉盛りペッパーしょうゆ」が販売休止になっている。

そのほかにも、2016年8月にブルボンの「ルマンドアイス」や、2014年4月にサントリーの「レモンジーナ」なども販売休止に追い込まれた。そしてみな口をそろえて「予想を上回った」と語るのである。サントリーは「南アルプスの天然水&ヨーグリーナ」が15年にヒットしている。

予想が上回ったのか、予想を低くしたのか?

新商品が販売休止になった理由を考察する際、本当に予想を上回ったのか、それともあえて予想を低くしていたのかを注意したい。前者であれば企業が意図せず供給不足になっており、後者であればマーケティング活動としてとらえられるからだ。

特に後者は「品薄商法」や「品薄マーケティング」などといった形で非難されることもある。これはあえて販売休止と発表することで、消費者の購買欲求を掻き立てる方法だからだ。たしかに販売休止と言われれば興味を抱かせやすいし、関心を集めやすいだろう。売切れ商品がニュースに取り上げられれば、その宣伝効果は高くもなる。

ただ、「企業としては、決して意図的に販売休止を発表して、消費者の飢餓感を煽り、爆発的に売上を上げようとしているわけではないでしょう」と株式会社MBA Solution代表取締役の安部徹也氏は綴る。これは実際に販売休止になれば、その期間は売上がなくなってしまうからだ。当然、それは機会損失に繋がるので、企業からしたらマイナス以外の何物でもない。

一方で「絶対にしていない」とも言い切れないのが実情である。これは企業の内部事情はまったく分からないから当然だ。その結果として消費者は「販売休止」と発表があるごとに、本当は品薄商法をしているのではないかと疑ってしまうのだろう。

予想を上回る2つの要因――在庫リスクとバズ

予想を上回ることを考察する際、「在庫リスク」と「バズ」の2つがキーワードになるだろう。

新商品を開発する際、どの企業でも必ず売れるものを作ろうとする。けれども本当に売れるかどうかは、新商品を販売しだした後に初めてわかるものだ。つまり場合によっては予想に反して全く売れず、大赤字につながる可能性もはらんでいる。

こうなると企業は「在庫リスク」を恐れるようになる。その結果、予想を小さくして、在庫リスクをなるべく避けようと働きだすのだ。こうした要因を加味して予想を立てるので、実際に販売してみると予想を上回りやすくなってしまう傾向にあるようだ。

また実際の売れ行きは何によって増減するか予想が立てにくい。特に昨今はインターネットが発展しており、有名人・著名人がSNSなどで話題にすることでブームになることもある。いわゆる「バズる」という現象だ。

バズると、その有名人・著名人を中心として一気にネット中でその商品・サービスが話題になりだす。結果として販売数は大きく伸びることに繋がりだすのだ。いずれにしろ販売予測は難しく、そこがマーケッターの腕の見せ所というわけだ。

販売休止後の商品は数カ月後に再販される

販売休止に追い込まれた商品の多くは、生産ラインが整い次第、基本的には再販されている。ただそれがいつになるかについて、消費者は分からない。ガリガリ君の場合は約半年後に、ハーゲンダッツであれば約10か月後に再販された。消費者であれば待ちに待った商品が再販売されたら嬉しいだろう。

一方、マーケッターとしては再販後の販売管理も難しい。これは新商品が一時的な需要なのか、長期間販売できるものか分からないからだ。再販の生産ラインを整えたにもかかわらず、それで在庫過剰になったら元も子もない。なるべく機会損失を出さずに、かつ在庫リスクも抱えないようにしていくことが求められるだろう。

物があふれる昨今において、企業では生産が間に合わないことは嬉しい叫びなのかもしれない。だが消費者の間で「品薄商法」と叫ばれないように気をつけなければならない。(吉田昌弘、フリーライター)

〇参考文献・出典
http://www.bizcompass.jp/original/re-management-005-31.html
http://biz-journal.jp/2015/06/post_10180.html

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