ゴールドマン・サックスがリアルタイムで従業員の総合的な業績を評価する、新たな能力開発システム を導入した。
同僚から顧客まで業績に関わる複数の関係者から多面的な評価を得ることで、様々な視点から各従業員の業績や能力を分析することができる「360度評価ソフト」がベースだ。従業員側からもマネージメント側からも頻繁にフィードバッグにアクセス可能な環境を整えることで、組織全体のパフォーマンス向上を狙う。
従業員の声から生まれた「Ongoing Feedback360+」
Bloombergなどの報道 によると、ゴールドマンは評価システム見直しの結果、より密度の高い社内コミュニケーションを望む従業員からの要望に応え、テクノロジーを利用した「Ongoing Feedback360+」という新システムの採用に踏みきったという。
評価のカギをにぎるのは「360度評価」ソフトだ。直属の上司からの評価に依存せず、複合的な評価を得ることで、新たな局面からの能力開発に役立つ。従業員にとっても多方面からリアルタイムな評価を受けることで、自分の業績を把握し、昇進のチャンスなどにつなげていく環境が整う。
昨年すでに一部の部門で試運転が行われ、自社ブログ上でも新システムの導入が明らかにされていた。今年4月以降、全従業員とマネージャーはダッシュボード上で、上層部や同僚からの評価やコメントをチェックすることが可能になる。
人材管理部門責任者、イディス・クーパー氏も、「こまめなフィードバックと透明性は、仕事に対する従業員の粘り強さを高める効果がある」 と、新たな評価法に寄せる期待を語った。
評価リクエストも可能なJPモルガンのモバイル・ツール
業績評価を含む社内コミュニケーション手段のデジタル化を検討、採用する大手企業は近年増加傾向にある。
JPモルガン・チェース は今年3月、同様の多面業績分析ソフト「Insight360」を利用した、従業員用モバイル・ツールを導入した。
業績開発部門のマネージング・ディレクター、マイケル・ダアウシリオ氏の説明によると、こちらのツールでは会議やプロジェクト完了後、マネージャーが特定の部下の業績を評価できるほか、従業員側から自分の業績に対する批評のリクエストや、同僚の業績に対する批評を投稿することが可能だ。
リクエスト側からフィードバックを観覧できる人物の設定もできるため、プライバシーも守られる。
仕事への意欲の糧にするか、プレッシャーにつぶれてしまうか
多面評価自体は、特に欧米の企業では定着した感が強い。主に人材育成目的で活用されているが、ゴールドマンやJPモルガンのように人事評価の指針として活用する企業も少なくはない。
両社が導入した多面業績評価ソフトは、デジタルを利用して従業員の隠れた潜在能力を発見・育成するという視点から、新たな市場としても注目を浴びている。
「Insight360」のほかにも「MyTalent」「People」「Employee Effectiveness」 「Blue 360 Degree Feedback」など、続々と長期的かつ多様的な人材開発に役立つソフトが登場している。
しかし一部から「公平性・精密性」に対する疑問も挙がっているように、上司や同僚、顧客からの評価が常に有意義だとはかぎらない。評価するのはあくまで人間であるため、一方通行の評価や差しさわりのない評価を受ける可能性も考えられる。また「業績自体が悪くても、熱意やサービス次第で評価は優秀」といった不均等が目立つケースもある。
そのためゴールドマンは、昇進や報酬などを決定する指針には通常の年次評価に重点を置く意向を示しているが、JPモルガンは「報酬などを決定する指針のひとつになる」とコメントしている。
従業員側 からは「業績の評価を頻繁にうけることで、仕事への意欲が増す」といったポジティブな意見が多いが、「四六時中監視されているような気がする」と、プレッシャーに感じることもあるようだ。受けとめ方は従業員次第だが、評価内容に関わらず、上司からのこまめなフォローアップは必須となるだろう。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)
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